意外な項目を取り上げたランキングってありますよね。最初は「アイスクリームへの支出額が日本一は金沢」という情報を紹介しようと思ったのですが、総務省「家計調査」を見ると、金沢はアイスクリームどころか、ケーキの支出金額も1位で、カステラとチョコレートは2位、ゼリーは6位でプリンも4位、菓子類全体では過去10年以上、ずっと1位だと分かりました。そこで今回は北陸に暮らす筆者が、スイーツの支出額No.1の金沢の秘密を考えたいと思います。
仮説その1:菓子に親しむ文化がある
どうして金沢市民は、全国でも突出して菓子類にお金を使うのでしょうか。2015~2017年の総務省「家計調査」で見たとき、全国平均の菓子類の支出額は83,195円ですが、金沢市は101,068円で全国1位になっています。
その理由は単純に「○○だから」と言い切れない部分があると思いますが、最もパワフルな仮説の1つは、「金沢が茶の湯の盛んな土地だから」と言えるかもしれません。全国でも京都、島根の松江、金沢は茶の湯の盛んな土地として知られていますが、茶の湯の盛んな土地には、菓子作りの文化も当然根付いています。
実際に加賀藩(江戸時代まで現在の石川県を統治していた組織)は、関ケ原の戦いの後、大藩として幕府に敵視されないように、文化方面に力を入れていきました。その一環で茶の湯が盛んになり、和菓子作りも積極的に行われて、市民にも広まったという歴史があります。
その文化は江戸、明治、大正と続き、昭和でも戦災を免れたため、今でも確かに息づいています。和菓子の老舗も多く存在し、職人の技術も伝承され、今なお菓子作りが盛んです。例えばJR金沢駅構内にある『金沢百番街』に行くと分かりますが、金沢(石川)の名店が作ったお菓子は、和菓子・洋菓子に関係なく、それこそいっぱいあります。『長生殿』や『福梅』、『じろ飴』、『辻占』など昔ながらの和菓子もあれば、辻口博啓シェフのスイーツの数々、『烏鶏庵』のプリンやカステラなど洋菓子もあります。和菓子の老舗が創作菓子として洋菓子の世界に進出するケースも少なくありません。
『よくわかる金沢検定受験参考書』(時鐘舎)にも、
<古くから加賀の地で茶の湯が盛んだったことから、現在も菓子の需要が多く、職人の技術も優れている>(上述の著書より引用)
と書かれています。上述した総務省「家計調査」において、同じく茶の湯が盛んな京都市の菓子類に対する支出額は15位、松江市は21位となっています。「茶の湯が盛んだったから」という理屈で言えば、京都市と松江市がもっと上位でないとおかしい計算になりますが、京都は過去6回の総務省「家計調査」で菓子類の支出額が全国トップ10以内に入る回もあり、松江市は和菓子の需要に限って言えば、金沢市に次ぐ第2位に輝いた回も過去にあります。菓子作りが盛んで甘味を食べる文化があったところに、明治維新以降、洋菓子も入ってきて、自然と支出額が大きくなっているのかもしれませんね。