冬の山形県・蔵王といえば、スキーリゾートとして有名で、連なる樹氷なども人気ですね。しかし、温泉ファンにとってはちょっと違います。
以前、冬の蔵王に行ってまったくスキーもスノボーも滑らずに帰ってきたら、知り合いに怪訝な顔をされたことがあります。抜けている話ではありますが、温泉のことしか頭になかったので、蔵王に到着するまで蔵王がかの有名なスキーリゾート地であることを忘れていたのです。
温泉街に到着し、大きなゲレンデを目の前にしたときに初めてここでスキーができることに気がついたという次第。もしかして一般的には“蔵王=温泉”より、“蔵王=スキーリゾート”としての認識のほうが高いのかもしれませんね。
としても、温泉ファンとしては絶対的に“蔵王=温泉”で、ここは譲れません。ということで、今回はウィンタースポーツシーズン真っ只中ではありますが、蔵王温泉をご紹介したいと思います。
東北随一ともいわれる強酸性のお湯
蔵王温泉の開湯は西暦110年と言われ、約1,900年もの歴史を持つ古湯です。意外ですが、蔵王温泉と呼ばれるようになったのはわりと最近のこと。
それまでは「高湯温泉」と呼ばれていました。1950年に日本観光地百選・山岳の部で蔵王が第1位となったのをきっかけに、蔵王温泉と名が改められたとか。
開湯にまつわる話としては、天皇の命を受けた日本武尊が蝦夷討伐に来た際に、家来の吉備多賀由の傷を癒したというのが語り継がれるストーリーで、多賀由の名にあやかり「多賀由温泉」と呼ばれ、それがいつしか「高湯温泉」に転じたというのが定説です。
同じく山形県にある白布温泉、福島県の高湯温泉と並び「奥羽三高湯」と呼ばれていたそうです。
そして蔵王温泉といえば、東北随一ともいわれる強酸性のお湯が特徴で、にごり湯ファンはもちろん、クセのある硫黄湯を好む温泉品評家をも満足させる名湯です。
自然湧出で、5つの源泉群とそこから分かれる47の源泉があり、湯量は1日約8,700トンという豊富さ。強酸性の湯は殺菌作用が高く、傷や皮膚病に効くともいわれています。
強酸性にプラスして硫黄泉である蔵王温泉の湯は、古くから心臓・便秘・糖尿・高血圧など健康促進に効果が高いとして知られ、また“美肌の湯”としても有名です。
湯につかると最初、肌がピリピリするかもしれませんが、これぞ強酸性の湯!この肌に温泉が効いている感じの刺激がたまりません。鼻腔をくすぐる硫黄の香りといい、湯に浮かぶ真っ白な湯の花といい、温泉とはこうあってほしいをすべて満たしている湯には思わずうっとり。
口に含んでみるととても酸っぱく、美味しくないレモン水みたいな味なのも、強酸性のお湯ならでは。
このタイプのお湯は目に入るととてもしみるので、あまり豪快に湯船のお湯で顔をばちゃばちゃできないのが残念ですが、上がったあとも身体に染み付く強烈な硫黄臭が温泉濃度の濃さを物語ります。
標高880mに位置する真冬の蔵王は一歩外に出ると文字通り凍える寒さですが、こうやって温泉につかって身体の芯から温まればそこはもう天国。雪国の人々が冬を越せるのもすべては温泉のおかげだなと、ひとり納得です。
古の時代から、人々の営みと温泉とは実に密な関係にあったのだろうと思いを馳せながら楽しむ湯浴み時間は至福といえますね。
蔵王の魅力は温泉だけじゃない!そぞろ歩きで風情を楽しむ温泉街へ
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