京都府立図書館〜そこはレトロな明治モダン建築の世界〜

武田五一氏デザインの特徴とは?

曲線と直線、和と洋の融合

「フランスの古典主義的要素を模していて、ウィーン・セセッションの潮流を受け継いだ曲線と直線の融合、さらに西洋と和を融合したデザインが武田氏ならではと言われていて、極めて優雅な雰囲気にしている」と堀さん。

メダリオン(円形のデザイン部分の名称)の装飾もシンプルで上品な雰囲気。

扉に施されたデザインも曲線と直線で生み出されています。

屋根の淵に施された球体状の細かい装飾。震災の影響でところどころ剥がれ落ちてしまっていますが、この細かい仕事に敬服。

色が褪せている部分と濃い部分があるのは、全てをリニューアルするのではなく、元々のものを残しながら、できるだけナチュラルに修復しているからだとか。

当時はこの階段を上がった扉の奥すぐに貴賓室が。階段は今は使われていませんが、当時の面影がそのまま残っています。当時は開館時間を待つ人がこの階段の下で行列していたそう。

府立図書館3階に保存されている家具類

一般の方は立ち入り禁止となる3階(月1度開催のバックヤード見学会でこのスペースも見学可能)には、岡崎移転時から使用されていた武田氏デザインの貴重な家具類やパネルが展示されています。

家具の随所にアール・ヌーヴォー調の意匠や、武田氏らしいデザインが留められているということで、堀さんが細部に渡って詳しく教えてくださいました。

花瓶の跡らしきものが残っている花瓶台は、「マッキントッシュらグラスゴー派の影響が色濃い、直線と曲線がうまく調和した、まさに武田氏らしいデザインといわれています」と堀さん。

日本の火鉢と西洋のテーブルを合体させたような「手あぶり付きテーブル」は、和洋のデザインとライフスタイルを見事に組み合わせたもの。和室や茶室など日本の意匠にも造詣が深かった武田氏のデザイン、又は武田氏の指示によるもの。

半開架式書棚。読みたい本の背表紙を指で網の間から押して、職員に伝え、取り出してもらうという閲覧システムに目からウロコ。全国の図書館でも、この半開架式書棚の現物が残っているのは稀だとか。当時、本がどれほど貴重なものだったかが伺えます。

そして、この椅子。赤の色味といい、ハート型の背もたれといい、この椅子めちゃめちゃ可愛くないですか〜!

曲線を用いたエレガントなハートのモチーフはアール・ヌーヴォーの象徴といわれています」と堀さん。20世紀初頭にハートモチーフの椅子があったとは。

椅子の足と座面の繋ぎ目の部品を持ち送りと呼ぶそうですが、よーく見ると、この椅子、持ち送りがあるのと無いのとがありますよね(写真上/持ち送りなし・写真下/持ち送りあり)。

この小さな持ち送りにさえも、アールをつけた曲線デザイン。「この辺りの芸の細かさは凄い!」と堀さんも唸ります。そして、私自身、この頃には、細かいところの曲線や、和洋コラボを見つけては、「あ、ここが武田氏らしいデザインだな、ふむふむ…」などと建築マニア気取りになってしまっていました(笑)。

芸術作品ですので、ファーストインプレッションの美しさを楽しむのはもちろんですが、特徴、見どころがわかってくると、さらに楽しめることを実感しました。堀さんのお陰です♪

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