村上春樹の著作のなかで、ネコ的な人間、イヌ的な人間、ヒツジ的な人間という記述があったと記憶しています(村上春樹的にいえば、「あるいは、そんな記述はなかったかもしれませんが」)。イヌは飼い主の命令に忠実な存在で、ヒツジは集団でひとつの方向に動く生き物です。
人間にもイヌ的な人、ヒツジ的な人がいるという話だったと思います。一方で、常に飼い主の思い通りになるとは限らず、プイっとどこかに出かけてしまうネコ的な生き方を理想とする人も少なからず居るかと思います。
そんな人たちのモデルとなっているネコは、イヌにもヒツジにもない独特の可愛さがあって、「動物のなかでネコが一番好き」という人も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、ネコ好きの人なら北陸旅行で必ず訪れたい、ネコ的名所を紹介します。それが、「ネコ寺」と呼ばれる曹洞宗の「御誕生寺」。
観光地にある観光寺ではありませんが、いまではネコとの触れ合いを求めて年間3万人が訪れるとの報道もあります。旅先でネコと触れあいたいと思ったら、ぜひとも訪れてみてくださいね。
4匹のネコを保護したところから「ネコ寺」の歴史が始まる
御誕生寺は「ごたんじょうじ」と呼びます。不思議な名前の由来は、ちょっとだけ曹洞宗の歴史をさかのぼる必要があるかもしれません。曹洞宗の大本山といえば、TRiP EDiTORでも過去に「凛とした空気に触れる。修行僧が暮らす禅の大本山、福井「永平寺」へ」で紹介した永平寺ですね。
しかし、実際には石川県の總持寺も大本山として存在していて、その總持寺を開山した人が栄山なのです。
「宗門の開祖は道元禅師であるが、教団としての曹洞宗を盤石ならしめたのは、栄山禅師の仏徳に他ならない」(御誕生寺のいわれより引用)
栄山は福井県の丸岡町、あるいは越前市帆山町の生まれとされていて、まさに栄山が誕生した帆山の地に1948(昭和23)年、初代の御誕生寺が建てられました。一時、御誕生寺は寺籍だけを残しなくなりましたが、1999(平成11年)年に現在の地へ御誕生寺が再建されたのです。
御誕生寺が「ネコ寺」と呼ばれるようになったきっかけは、捨てられた4匹のネコを、お寺が保護したところから始まるそう。水やえさを与えているうちにネコの数が増え、数が増えると誰かが勝手にネコを捨てていくようにもなっていきます。
筆者が育った家もネコがたくさんいて、同じような出来事がありました。「この家はネコが好きだろう」と、誰かが家の前などに勝手にネコを捨てていくのです。
もちろん、捨てられた側は放ってはおけません。「かわいそうに」とネコを引き取るはめになり、結果としてネコが増えていきます。御誕生寺も最初は4匹のネコが、最大で100匹ほどにまで増えた時期もあったのだとか。
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