「俺、東京に行くことになったけん」
春を迎えると全国各地で、地方から都会へと引っ越し、これからの人生を紡いでいくという決意表明が行われます。
東京都住民基本台帳人口移動報告(平成30年度)によると、1年間での他府県から東京都への転入、いわゆる「上京」をする人の数は42万3,617人となっています。これは神奈川県藤沢市や長崎県長崎市、あるいは愛知県豊田市といった市町村の人口とほぼ同人数です。
かくいう私自身も、2年前に「俺、東京に行くことになったけん」という言葉を残して、福岡県北九州市から東京都へ引っ越してきました。
大人の「上・京・物・語」
さて、これだけ大勢の人が東京に引っ越す理由の多くは、進学や就職なのではないでしょうか。東京の大学に進学することになったり、東京の会社に就職することになったりと、春はそれぞれの夢に向かって人生の新たな1ページを開く季節です。
私の場合は、すでに福岡で会社を作っていました。しかし、日本で生まれたからには、そして男として生まれたからには東京に出て、東京から全国へ、そして世界へと自分の思うサービスを展開したい。その気持ちが抑えられずに、会社ごと東京へ引っ越すことを決意しました。
東京タワー、お台場、スカイツリー…テレビで見たことのある街や人がいる場所、世界へ飛び立つための玄関口、全国から集まってきた優秀な人たちとの出会いと競争の土俵。
東京から始まる輝く未来を思い描くと、そこには大きなワクワクがあります。しかしそれと同時に、少しの不安もあるかもしれません。
例えば、全く知らない場所でうまくやっていけるだろうか、知らない人とうまくやっていけるだろうか。
東京で待ち受けるであろう経験したことのない課題や困難への挑戦をうまくやっていけるだろうか。あるいは自分の能力は全国から来る人に通用するだろうかというような不安があるかもしれません。
私が東京へ行くことを告げたときに「頑張れよ」という温かい言葉を少し寂しそうな顔でいってくれた家族や友人、かわいがっていたペットは私のことを忘れてしまうかもしれない。
そんな彼らと、また元気で笑顔で再会できるのだろうかという不安。いろいろな思いが頭をよぎり、上京の日が近づくにつれて、後ろ髪を引かれる思いがとても強いことに気づくかもしれません。