黒船来航が関係していた?歴史からたどるニッポンの「乾杯」豆知識

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グラスを掲げる動作はヨーロッパ発祥?

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黒船の来航が日本人と乾杯(杯を掲げて声を発する)の出合いを生んだと紹介しました。

では、黒船を操って来日したアメリカ人は、乾杯といつ出合っているのでしょうか。アメリカは歴史が浅く、移民がつくり上げた国です。杯を捧げるという動作が、アメリカで生まれたとは考えにくいです。いつごろに起源を持つのでしょうか。

例えば『世界のお正月百科事典』(柊風社)を見ると、残念ながら乾杯(杯を掲げて声を発する)の動作の起源は、古すぎて追えないといいます。

しかし、古代エジプト、ギリシアの都市国家、ペルシア帝国、ローマ帝国などが栄えたころから、乾杯(この場合は、中国語のgambeiに近く、杯を飲み干すという意味)の習慣はしっかりと確認されているといいます。

祝宴における乾杯の様子。1888年の絵画image by:Peder Severin Kroyer / Public domain

古代ギリシアやローマでは、

<毒を盛られるのを防ぐために「人の健康を祈って乾杯する」習慣が発展した>(『世界のお正月百科事典』(柊風社)より引用)

と確認されているそう。お客をもてなす際に、主人が率先してワインを飲み干し(乾杯)、毒が入っていないと示すところに乾杯の起源が認められるみたいです。

今風にグラスを掲げる動作としては、5世紀に存在したとされるブリテン王ヴォーティガーンに関する伝説が残っています。

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サクソン人同盟軍(ドイツ北部)のためにヴォーティガーンが宴を開いたとき、サクソン人同盟軍の側がエール(ビール)の注がれた杯を掲げて、「王のご健康に乾杯」といったとされています。

その後、お互いが返杯を繰り返し、大いにお酒(エール)が進んだとされています。盛り上がりすぎて、ブリテン王が国土の一部をサクソン人に譲るほどになったとか。グラスを掲げる動作そのものは、この辺りに起源があるのかもしれませんね。

以上、乾杯の歴史を大まかにまとめました。乾杯とはグラスを掲げて、何らかの声を発する一連の動作です。

声を発する際に「カンパイ」というようになった時期は、大正時代の初期だという話をしました。何気ない動作でも、やはり奥深い歴史があるのですね。

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