「北陸のクイズ王」といざ勝負。初心者でも楽しめる石川県のクイズカフェ

手ぶらで早押しクイズを満喫できるカフェ

店内の様子image by:坂本正敬

塩崎さんのクイズとの出会いは、中学2年生のころにさかのぼるといいます。当時放送されていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ系)を見て憧れを抱き、高校生のころは友だちと休み時間に早押し機でクイズを楽しむような青春時代を送ってきたそう。

クイズの醍醐味(だいごみ)を聞くと、

「ボーリングに似ている」

と塩崎さん。

「突き詰めれば突き詰めた分だけ、ゴールが遠のく奥深さがクイズにはあります。その一方で、誰でも気軽に参加できる楽しさもある。早押しクイズに正解した瞬間は、ボーリングのストライクを取った瞬間に、すごく似ていると思います」

クイズスペースモア(オレンジカフェ)には、塩崎さん自前の早押し機がカウンターに用意されています。

誰でも予約なしで足を運べる上に、いきなり早押しクイズにもチャレンジできて、クイズ特有の爽快感を手ぶらで満喫できる環境が整っています。

店内のカウンターに並べられた早押し機image by:坂本正敬

筆者もカウンターに座り、早押しボタンを押してみました。プッシュした瞬間に、LED(発光ダイオード)のランプがまぶしく点灯し、どこかの番組で聞いたような「ピンポーン」という効果音が店内に響きました。このサウンドは、確かに気分が高まります。

現在は昔と比べてかなり早押し機の価格も下がって、手に入りやすくなったといいます。それでも、身近に本格的な早押しボタンを押せるチャンスは、めったにありませんよね。このボタンを押すためだけにお店を訪れてみても、楽しいかもしれません。


クイズを入り口に認知症への理解を深めてほしい

競技クイズの問題集image by:坂本正敬

クイズスペースモア(オレンジカフェ)が提供する飲食のメニューは、コーヒーカレーのみ。コーヒーは1杯100円、カレーは300円(しかも、子どもと高齢者は100円)です。いくら実家のスナックを利用しているからといって、いくらボランティアだからといって、100円や300円の料金では運営コストすら回収できないはず。その点を聞いてみると、

「もちろん、赤字です」

と塩崎さんは笑います。普段は社会福祉士として本業を持つ塩崎さん。休日を使って赤字を出してまで、何のためにクイズスペースを開いているのでしょうか。

その根っこにはもちろん、クイズが好きだという塩崎さんの趣味が動機としてあります。しかし実際には別の狙いもあって、クイズスペースモアのカッコ書きの部分、「オレンジカフェ」が答えになっているのだとか。

この「オレンジカフェ」とは、認知症カフェの別名です。認知症のある人や家族、さらには地域の人も併せて、誰もが参加できる場所を認知症カフェと呼びます。その別名をオレンジカフェというそう。

さらにイベント開催日の午前中には、介護保険外のサービスとして高齢者の集い場「ミニデイ」を開き、体操や食事提供も行っているとの話です。

午前はミニデイ、午後はクイズカフェ、全体ではオレンジカフェといったスタイルで、得意のクイズと絡めて、認知症の啓もう活動、高齢者の支援を行っているのですね。

店内に特別に用意された本棚。クイズ関連の本に加えて、認知症に関連した書籍もあるimage by:坂本正敬

しかも、塩崎さんは、認知症の人や家族を応援する認知症サポーター養成講座の講師も務めています。

「それ自体も偏見なのですが、認知症カフェといわれると、どうしても気軽に入ってこられないイメージがあるかと思います。ですから、昔からずっと続けてきたクイズを入り口にして、認知症への理解を深めるきっかけをつくりたいと思いました」

店内には、認知症に関する書籍や認知症サポーター養成講座のお知らせも置かれています。だからといって、入店したら認知症について学ばなければいけないわけでもありません。

純粋にクイズを楽しみに訪れても、もちろんオッケー。その来店をきっかけに、「認知症の理解が深まるようなきっかけが生まれたら幸い」というスタンスで、塩崎さんは毎月クイズスペースを開催しているのですね。

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