地中海の東端に浮かぶ中東「キプロス」は、ヨーロッパだけではなく、トルコやエジプトなどの影響が大きいお国柄。
はるか昔から交易が盛んで、ものだけではなく人の交流も多かったため、当時の栄華を感じられる遺跡がいくつもあります。
アフロディーテ(ヴィーナス)誕生の地とされるキプロス。東地中海で最も美しいモザイクといわれるほど見事なモザイクが残る遺跡をご紹介します。
地中海を一望!円形劇場も残る「クリオン古代遺跡」
キプロス南部の街・リマソルの近くにあるのは、紀元前4世紀のギリシャ時代からローマ時代を経て、7世紀中ごろまでの古代遺跡が残っている「クリオン古代遺跡」。
近くにはコロッシ城もありますが、観光のメインはクリオン古代遺跡です。
かなりのモザイクが残っていますが、保存状態が良いのは「キティシス像」で、右手に持っているのは、ローマ時代のモノサシだそうです。
4~7世紀ごろのハマム(公衆浴場)は、海が望める露天風呂のようで風情がたっぷり。地中海を眺めながらの入浴は、当時の人はどう思っていたんでしょう。
クリオン古代遺跡には、2,500~3,000人を収容できるという紀元前2世紀に建てられた「円形劇場」もあります。
何度も地震で崩壊したらしいですが、その度に再建され現在でも使われています。現役というのには驚いてしまいますよね。
ヴィーナス誕生の舞台「パフォス」の美しき海岸
リマソルからキプロス西部のパフォスへ向かうと、ヴィーナス誕生の舞台とされる海岸があります。
美と愛の女神アフロディーテは「波の泡」から誕生したとも、「流れ着いた」ともいわれていますが、伝説はさまざま。それでも景色を一目見ると海の色に引き込まれそうな美しさです。
海岸にある大きな岩「ペトラ・トゥ・ロミウ」は、「ギリシャの岩」という意味で、女神アフロディーテとは何も関係ないのですが、ギリシャの英雄ディゲニス・アクリタスがキプロスに攻め込んできたアラブ人に向かって、その巨大な岩を投げ込んで、撃退したという伝説が残っています。
観光客は海岸でウロウロと、ハート型の石を探しています。なんでもここでハート型の石を見つけられれば、幸せになれるという言い伝えがあるそうですよ。
モザイクだらけの「パフォス考古学公園」
世界遺産に登録されているパフォスは、古代ギリシャやローマ時代にキプロスの首都だったところ。「パフォス考古学公園」として整備されている遺跡は、1962年に農夫によって偶然発見されたのだとか。
ローマからやってきた貴族たちの邸宅、テセウスの館、ディオニソスの館、エオンの館、オルフェウスの館には、ギリシャ神話をモチーフにしたもの、当時の生活のようすが描かれたものなど、東地中海では最も見事だといわれているモザイク画が残っています。
海に面しているのが2~7世紀のもので、ローマ帝国のキプロス総督宅だったテセウスの館。
パフォス考古学遺跡のなかで一番大きい館となっていて、部屋数は100以上もあったとか。なぜかここは、野ざらしで放置されています。
3~4世紀の作品だというクレタ島の地下迷宮を舞台にした、テセウスとミノタウロスの伝説をモチーフにしていて、頭が牛で身体が人間という怪物ミノタウロスに向かって、棍棒を構える古代ギリシャ神話の英雄テセウスのモザイクがすばらしいです。
ほかにも「アキレス腱」の語源になった、英雄アキレウスが産湯を使っているところなどもあります。
テセウスの館とは違い、ディオニソスの館には屋根がありしっかりと保護されていました。ただ屋内は、屋根の色が反射してしまいます。
ちなみに「ナルシスト」の語源になっているナルキソスは、水に映った自分の姿に恋しちゃう人ですので、しっかりと映していらっしゃいます。四季を擬人化したモザイクはとても大きくて、一枚で撮りきれないほど。
こちらのモザイクは、一番左がこの館の名前にもなったディオニソスで、ローマ神話ではバッカスと呼ばれる酒の神様です。
左から3人目の牛を連れているのがイカリオスです。ディオニソスがイカリオスにワインの造り方を教えたそうです。
エロス(キューピッド)をからかったために、恋に陥る矢を射られたアポロンが、恋を拒む矢を射られたダフネを追い続け、とうとう月桂樹に変身してしまったダフネのモザイクもありました。
モザイク疲れしそうなくらいたくさんの歴史を感じられるパフォスの考古学公園から、「カトパフォス港」へは歩いていくことができます。
港には、ビザンチン時代の要塞だった「パフォス城」があり、周りにはカフェやお土産屋さんが並ぶプロムナードになっていました。
当時の栄華ほどではないのでしょうが、いまでもにぎやかで観光客であふれています。キプロスを訪れる際は、長い歴史を感じる古代遺跡を見に行ってみませんか。
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