がん患者にも、髪型の自由を。美を追求する「資生堂美容室」の挑戦

image by:岡田すみえ

ようやく漕ぎ着けた、オリジナルウイッグの開発

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今回、資生堂美容室が開発したウイッグには人工ファイバーが使用されています。

コスト面や手軽さを重視し、人毛は採用しませんでした。人間の髪なので、洗うとアイロンでスタイリングしたカールは取れるし、都度ブローしてケアしなくてはいけません。一方のファイバーだと軽いし、手入れが楽。形状記憶のファイバーなので、アイロンで形をつけておくと、お客様は押し洗いして乾かしてもらうと形が戻る。あとは装着するだけ」と、都築さん。

ファイバーを採用することで、美容師が提案したスタイルが維持され、手入れが簡単。これにより、お客様への負担を軽減できるそう。

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「素材から徹底的にこだわりました。キューティクルがある人間の髪と人工毛では光の反射の仕方が違うため、人工毛はテカテカした感じが出てしまいます。詳しくは企業秘密なので申し上げられないのですが、この商品は特殊な加工をしてもらっているので、より人間の髪の毛の質感に似ていると思いますよ」

スムーズに開発が進んだように見えるが、やはりいくつもの苦労があったよう。

通常のウィッグメーカーであれば「脱げにくい・ずれない」という安全性を重視するため、ネットの量が深く、首のあたりまできてしまうほど。またウイッグを被ったときにできるふくらみ方、何%まで減らすかなど細かく試作を繰り返し、よりデザインと自然さを追求したそう。

「耳のところが浮くとウイッグ感が出てしまうので、耳のラインのフィット感がでるよう、肌に負担がない程度の硬さのワイヤーを入れています。こだわりがすごいから、メーカーさん泣かせで、試作、試作を繰り返しました。デザインと安全性を両立させるために何回も作ってもらって、結局2年くらいのやりとりになっていましたね」

また同商品はウィッグが3セクションに分かれていることが最大の特徴であり、これは最終的に部分ウイッグとしても使えるようにと配慮されたもの。

その未来まで考えてみると、後々部分ウイッグにするときに、いまどのラインをカットすればいいのか?資生堂美容室のカットのマニュアルをベースに、ガイドラインも作っているんだとか。

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