好きになってはいけなかったのに。衝動に突き動かされ、宮崎の海へ走った

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およそ10時間、休憩もせずに車を走らせて行き着いたのは、あのとき嫌いになったはずの宮崎県だった。この場所へ来たところで、先輩への気持ちを過去のものにできるわけもない。ただ、なんとなく、どこかへ遠くへ行きたくてたまらなかった。

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宮崎インターを降りたころには、もうすでに太陽は沈みかけていて、空は紫とオレンジ色が混ざった複雑な色をしていた。見たこともない、南国のフルーツのような強い色。遠い異国にきたみたいだ。適当な海岸べりに車を停めて浜辺を歩く。靴で砂浜を踏むと、柔らかく崩れる。その感触が心地よい。

ザク、ザク、ザク。一歩一歩踏みしめるように歩く。靴先にまとわりつく砂を見ていると、不意に視界が歪んだ。靴先を払っても歪んだ視界はなかなか元には戻らない。

靴先が、砂浜が点々と濡れる。わかっていながら好きになってしまったこと、何も伝えられなかったこと、全部が悔しい。できることなら入社前からやり直したい。少しずつ、でも確実に近づいてくる海が、これが現実だと突きつけてくる。

砂を蹴り上げて遠くに消えゆく太陽を睨んだ。いっそ派手に、恥ずかしく暴れてやろうとネクタイをほどいて海に投げつけ、大きく息を吸って叫ぼうとした。

でも、言葉が出てこなかった。もう何を叫べば良いのかもわからない。恋した人に好きだと伝えることさえできなかった。僕がいいよどんでいるうちに、太陽はあっさりと海へ沈んだ。

きっと誰かはいうだろう。いつか綺麗な思い出になるよと。こんなどうしようもない気持ちを「美しい過去」なんて表現してしまうくらいなら、綺麗な思い出になんてならないでくれ。太陽が残した淡いオレンジ色の光にすがるように、僕はそう願った。

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  • ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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