富山県にある、日本一小さい村「舟橋(ふなはし)村」。この舟橋村にはなんと、住民1人あたりに換算した際の本の貸し出し数が、日本一を記録する図書館があります。
しかもこの図書館は、駅舎に併設されており、電車に乗り降りしたついでに本を借りられるユニークな特徴もあるのです。話を聞きつけた筆者は早速図書館に行ってきましたので、その様子をレポートします。
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日本一小さな村にある「日本一」本を貸し出す図書館
富山県の県庁所在地、富山市から8kmほど東に行った場所に、舟橋村という自治体があります。面積は3.47平方km、簡単にいえば縦横が3km程度しかない村で、全国に1,700近くある市区町村のなかでも、最も狭い自治体です。
この舟橋村は、全国的には無名に近い存在ですが、実は小ささ以外にも日本一を誇る特長が他に2つもあります。
例えば人口に対する年少者(15歳未満)の割合が、21.8%と高く、若者人口の比率の高さで日本一を誇りました(2010年の国勢調査時点)。
その背景には、村をあげた子育て世帯の移住サポートがあります。村が宅地開発をするなど、自治体が子育て移住者を呼び寄せる取り組みをしているのですね。
もう1つの日本一は、冒頭でも紹介した図書館の話です。富山地方鉄道の越中舟橋駅が村のほぼ中央にあり、その駅舎に併設する形で、1998(平成10)年に図書館がオープンしました。
それ以来、村民はもちろん、村外に暮らす人にも、通勤や通学のついでに図書館が利用されるようになります。結果として、住民1人当たりの年間貸出冊数が32冊と、日本で最も多い数を記録するようになりました(『日本の図書館2015』より)。
駅前の看板に見られる「日本一ちっちゃな舟橋村」というキャッチコピーには、自虐的なニュアンスが、見方によっては感じ取れるかもしれません。
しかし舟橋村には、面積の狭さのみならず、他にも全国に胸を張って誇れる日本一が2つも存在していたのですね。
靴をぬいで上がる駅前の図書館
文部科学省が図書館振興の一環としてまとめた「これからの図書館像-実践事例集-」のなかでも、舟橋村の図書館は「舟橋村立図書館における村おこし駅舎との一体化(富山県舟橋村立図書館)」として紹介されています。
その資料によれば、図書館づくりの発端は1989(昭和64/平成元)年までさかのぼるといいます。1989年に駅舎の再建が決まり、その翌年に図書館併設が決まり、いまの流れが生まれました。
できあがった図書館は、RC造の3階建て、延べ床面積は1,518平方メートルです。1階が児童・AVコーナー、2階が一般図書コーナー、3階は書庫ですから、実質的に利用者が出入りできる場所は1階と2階になります。
ざっと図書館の本のラインアップを見ると、郷土に関する書籍や資料、パンフレット以外は、特に他の図書館と違いはありませんでした。
しかし、この図書館は、大きな公共の図書館ではなかなか見られない特徴があります。駅前にある図書館として考えると、余計に意外かもしれません。
舟橋村の村立図書館は、靴をぬいで利用する施設になります。靴をぬぐ文化のない国から観光客が来たとしたら、二重の意味で驚いてしまうかもしれませんね。
筆者も実際に靴をぬいで、靴下で木製フローリングを歩き回ってみました。思った以上に違和感はなく、すぐになじんで、むしろ「村立図書館」という名前から伝わってくるアットホームさが足の裏から感じられました。
初めての来館で、筆者は舟橋村の村民でもありませんが、想像以上にくつろげた理由は、この靴をぬぐ入館スタイルにあったのかもしれません。
先ほどの旅行者の話でいえば、靴をぬいで館内をめぐる時間は、旅先の緊張が解ける意外なリラックスタイムにもなるかもしれませんね。
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