「男女共用」ではなく「すべての性のトイレ」がアメリカで広がるわけ

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日本は逆方向に進んでいる?

「すべての性」のトイレimage by:Shutterstock.com

つい最近のことですが、日本では逆に「男女共用」のトイレは好ましくない、とする厚生労働省の省令案を解説する記事がヤフーニュースに転載されました。ソース元は「弁護士ドットコムニュース編集部」です。

記事ではこの省令案に反対する人の声も紹介しています。その多くは女性の視点から、女性専用トイレがないことによって性犯罪や精神的苦痛が増える危惧を指摘しています。ただし、そこには性的少数者が直面している苦痛に配慮する意見はどこにも見当たりません。

村上春樹著『海辺のカフカ』には、女性の権利向上を目指す団体の関係者が図書館に男女別々のトイレを設置しないのは女性の苦しみに対するネグレクトだ、と糾弾する場面がでてきます。

その苦情を受けた図書館員は、女性の体として生まれながら心は男性のトランスジェンダーでした。この本が刊行されたのは約20年前にもなる2002年ですが、一部の人々のLGBTQに関する意識はそのころからあまり変化していないのかもしれません。

誰もが公共トイレを安心して利用できるように

トランスジェンダーの人権を訴える人々 image by:Ryanzo W. Perez/Shutterstock.com

アメリカの方が日本より人権意識が進んでいるといいたいわけではありません。アメリカでも、トランスジェンダーの権利を守るために設立された非営利団体「National Center for Transgender Equality」が2015年に公開した報告書(PDF)によれば、トランスジェンダーの59%が公共トイレの利用をためらったことがあり、9%が使用を拒否されたことがあり、12%が罵言を浴びた経験があるということです。

そうした背景から、トランスジェンダーの多くが外出したときに公共トイレの利用を控えるため、8%が尿路感染症、腎臓感染症、または他の腎臓関連の問題を経験しているのだそう。人間の尊厳に関わる由々しき問題です。

Targetの例にあるように、「すべての性」のためのトイレを新たに設置するには費用と手間もかかります。見た目が異性の人が同じトイレに入ってくることに心理的な抵抗がある人も多いかもしれません。

しかし、現実に男女別のトイレによって苦しんでいる人が少数ながら社会に存在している以上、「すべての性」のためのトイレをもっと増やしていくべきではないでしょうか。

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