「男女共用」ではなく「すべての性のトイレ」がアメリカで広がるわけ

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最近、アメリカのカリフォルニア州では「All Gender Restroomすべての性のトイレ)」と看板に書かれた公共トイレをよく見かけるようになりました。

それもそのはずで、2016年9月に発効した州法で、すべての公共施設にある独立した形のトイレは必ず「すべての性」と明示しなくてはならない、と定められているのです。

「すべての性」とは、生まれたときの体の性と心の性が一致しているシス男性とシス女性だけではありません。体と心の性が一致していないトランスジェンダーも、性別が異なる要介護者や子どもを連れた保護者も、だれでも性別を問わず利用できるトイレです。

性的少数者(性的マイノリティ)への差別に反対する姿勢を示すため、各地の教育機関や商業施設が次々と公共トイレを「すべての性」に変更するか、あるいは新規に設置しています。

※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。

「包括した社会」への取り組み

カリフォルニア州立大学フラトン校 image by:Steve Cukrov/Shutterstock.com

こうした取り組みをいち早く行ったのはやはり各地の大学でした。私が実際に見た例でいえば、カリフォルニア州立大学フラトン校の図書館の1階に大きなトイレのスペースがあります。

トイレの入口はひとつで、男女の区別はありません。中に入ると長い洗面台があり、その奥には個室が並んでいます。利用者の安全と安心のためでしょう、個室のドアと壁は床から天井まで届き、隙間がまったくありません。

同大のホームページによると、キャンパス内にはこうした「すべての性」トイレが17カ所あり、その設置場所はグーグルマップで簡単に見つけることができます。

Targetの店舗 image by:Sundry Photography/Shutterstock.com

ディスカウント百貨店チェーン大手の「Target(ターゲット)」は、2016年にトランスジェンダーの顧客や従業員が生まれついての性とは異なる店内のトイレを利用することを認めると発表しました。

その当時、アメリカ国内のいくつかの州でそれを禁ずる法案が提出されていたことに真っ向から反対する姿勢を示したものでした。


Targetの発表は必ずしも世間から広い支持を受けませんでした。女性や子どもの安全が脅かされることを懸念した顧客たちを中心に、Targetのボイコット運動が起きたのです。

CNNが報じたところでは、生まれついての性とは異なるトイレの利用に反対するおよそ140万人の署名が集められ、Targetの売上は前年同月比で7%減少したそうです。

Targetはそれでも当初の方針を貫いただけではなく、アメリカに約1,800カ所ある店舗のすべてに「すべての性」のトイレを設置すると発表。それにかかる費用は2,000万ドル(約23億円)と見積もられました。

同じような動きは、ほかでも多く見られます。例えば、スターバックスの店舗は以前は男女別だったトイレのほとんどが「すべての性」トイレに置き換わっています。

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