闇夜に浮かぶ幻想的な光。吉野川の歴史ある「シラスウナギ漁」の魅力

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真っ暗闇の中、蛍の光のようにライトを照らしながら行われる「シラスウナギ漁」をご存じでしょうか?徳島県を流れる吉野川の河口付近で行われる漁の方法で、その様子がとても幻想的だと話題になり、多くの見物客が訪れています。

今回は美しく伝統的な吉野川のシラスウナギ漁、その全貌に迫ってみましょう!

※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。

徳島の冬の風物詩「シラスウナギ漁」

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高知県と徳島県を流れる一級河川の吉野川。徳島市内を流れ、紀伊水道へと流れ込む河口付近で、伝統のシラスウナギ漁を見ることができます。この漁の様子が話題となり、全国的に知れ渡ったのは少し前。美しい漁の風景が写真に捉えられ、SNSやブログなどで紹介されてからのことです。

暗闇の中をいくつもの船が光で照らすシラスウナギ漁は、この場所で伝統的に行われていた方法で、その風景は眉山からの夜景や徳島城の石垣などとともに「とくしま市民遺産」にも選出されています。

この「とくしま市民遺産」とは、市民によって選ばれる、徳島を代表する風景のこと。シラスウナギ漁も後世に残したい徳島の宝物というわけです。

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真っ暗な海の中、光に誘われて現れるシラスウナギは、ウナギの稚魚のことを指します。通常、私たちが目にし、食べるウナギはグレーがかった色をしていますが、その稚魚であるシラスウナギはその名の通り真っ白!細く小さなシラスウナギですが、その価値はとても高く、貴重です。

というのも私たちが食すウナギ、人の手で養殖することがとても困難な魚の一種。卵から育てることができないため、稚魚を育てて食用にするのが一般的です。

吉野川で水揚げされるシラスウナギも、次の日には養殖業者へと販売され全国に出荷されます。なんとその価格、一例によると1kgで130万円前後!2018年にはなんと1kgで300万円以上だったこともあるのだとか。

シラスウナギの生態を利用した漁

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ウナギは海で生まれ、川で生活する「降河性回遊魚(こうかせいかいゆうぎょ)」という種類です。吉野川を登ってくるシラスウナギの稚魚は、ニホンウナギなので遠くフィリピン海の辺りで産卵すると考えられています。


海で生まれたシラスウナギは、まずは海の中を漂います。少し成長をしたあとに川に向かって泳ぎ始めるのですが、このときに潮の力を利用します。潮の力を使い、一気に川を登るのですね。

この川を登る前の稚魚を捉えるのが、吉野川河口で行われているシラスウナギ漁です。水面を明かりで照らし、つられてやってくる稚魚を掬うという方法で漁が行われています。

シラスウナギ漁が見られるのはいつ?

シラスウナギの生態を利用する漁ですので、一年中行われているわけではありません。吉野川の河口でシラスウナギの漁が見られるのは、毎年12月15日から4月15日まで。漁に出られるのは、事前に許可を得た船だけです。

ニホンウナギは実は急激に数が減っている「絶滅危惧種」の「危機」というカテゴリーに区分されています。乱獲を防ぐためにも許可が必要というわけですね。

では、漁が許可されている期間であれば、いつ訪れても美しいシラスウナギ漁を見ることができるのでしょうか?答えはNO!漁にはタイミングがあり、見られない日は一艘も見られないこともあります。

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