日本の100年前を振り返る。1923年「10月」に流行った新たな商売とは?

流行ってすごいですよね。ちょっと冷静になって振り返って見ると「なんでこんなのがブームだったの?」と驚く話が多いです。きっと今流行っているコンテンツも、しばらく経つとあっという間に飽きられてしまうんでしょうね。

しかし、なかには時を超えて定着し、ひとつの「文化」にまで成長した物事もあります。

そこで今回は、ちょうど「100年前の10月には何が流行していたのか」について、『明治・大正家庭史年表』(河出書房新社)を基に、振り返ってみたいと思います。

「関東大震災」を取り上げた書籍がベストセラーに

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最初に紹介するブームは『大正大震災大火災』(講談社)です。

ちょうど100年前の1923年(大正12年)は関東大震災が起きた年。その震災関連の出版が相次ぐ中で、講談社が出版した『大正大震災大火災』がベストセラーになりました。この書籍には、東京の被害の様子が詳細に記されています。

<テレビもラジオも無く、ニュースといえば新聞のみという時代、震災の詳細な記録として全国的に受け入れられ、40万部を売ったといわれています>(印刷博物館より引用)

関東大震災では多くの人が犠牲になりました。特に、多くの避難者が駆け込んだ両国の広場には、四方から火の手が押し寄せ、炎の竜巻(火災旋風)が発生し、4万人に近い人たちが命を落としました。

それらの悲劇を含むさまざまな事柄が記録された、今では歴史的価値を持つ偉大な書籍です。

ユニークな「新商売」が東京で続々誕生

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関東大震災を皮切りに、東京ではいろいろな「ビジネス」が誕生しました。

1923年(大正12年)10月号の雑誌『現代』にも、震災後の東京で新商売が続々と誕生していると書かれています。現代的な感性で振り返った時にユニークに感じるお店は、


  • みそ汁屋
  • スイカ屋
  • ナシ屋
  • コップ酒屋
  • マスク屋
  • 野外床屋
  • 巻きたばこのバラ売り屋

などなど。震災後、復興の過程でいろいろな商売が東京で生まれ、震災を乗り越えようとする被災者の暮らしを支えたのですね。

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坂本 正敬 :翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は富山に在住し、国内外の紙・ウェブ媒体に日本語と英語で文章を寄稿する。主な訳書に〈クールジャパン一般常識〉、主な著書(共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉創刊編集長。他、広報誌やリトルマガジンで編集長を務める。