日本の100年前を振り返る。1923年「10月」に流行った新たな商売とは?
関西で「握りずし(江戸前ずし)」が流行
関東大震災は、「寿司(すし)」の世界にも新たなブームを生み出しました。
震災で失業した東京のすし職人がこの時期に関西へ流れ、東京の握りずし(江戸前ずし)を提供するようになります。江戸前ずしについて調べると、
<江戸前(江戸湾でとれた魚介)を用いたすし。また江戸風のすし。文政年間(1818~1830)に江戸で考案されたとされる握りずしをいうこともある>(講談社『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典』より引用)
と書かれています。東京湾で捕れた魚介類を握りずしにした郷土料理ということで、「江戸前ずし」と呼ばれるようになったのですね。
鯖ずしや箱ずしといった「押しずし」が主流だった関西で、結果として、握りずし(江戸前ずし)が流行しました。
ちなみに、すしの話題で言えば、1923年(大正12年)にはマグロがブームになっています。「下魚」扱いされていたマグロが高級すし屋でも取り扱われるようになりました。
今では、当たり前のすしネタですが、100年前くらいから、すしの種として正式に認知されるようになったのですね。
赤痢やチフスなどの伝染病が流行
流行の意味がちょっと違うかもしれませんが、関東大震災後の過酷な生活環境下において、被災者の間で「伝染病」が流行しました。
主な伝染病は赤痢とチフスです。100年前の10月18日の時点で患者数は3,686人、死亡者数は624人にまで及びました。
赤痢とは、赤痢菌が口から入り、下腹部に痛みが生じる病気。血液の混じった赤い下痢(血便)が出ます。チフスとは、一般的に腸チフスを意味し、腸チフス菌による感染症を意味します。悪寒、発熱、全身のだるさなどが症状とされます。
以上のように、100年前の10月は、関東大震災直後の復興期にあたり、関東大震災の影響によって、さまざまな流行が生じたとわかります。
ちなみにこの年は、そば屋のメニューにカレーやかつ丼が登場し庶民の間で人気を博した時期でもあります。意外に、一過性のブームに終わらず、文化として定着した変化も少なくないみたいですね。
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