有田みかんで有名な和歌山県 有田川町 で、世界をまたにかけた まちづくり が行われているそうです。 人口減少にともない、かつて過ごした学校が廃校になったり思い出が廃れていくのは見ていられない、そうして立ち上がった有田川町官民一体の活動を「マチノコト」からご紹介します。
和歌山でポートランド流のまちづくり?
住民が旗振り役の地方創生プロジェクト『有田川という未来 ARIDAGAWA2040』
子ども時代を過ごした場所が廃墟になってしまったら、切ない気持ちになりませんか? 総務省の統計によると、現在、日本人の総人口は年間27万人減少しているといわれ、保育所・幼稚園・小学校など、かつて子どもたちを育てた地域の学び場はどんどん縮小する一方です。
和歌山県にある「有田川町(ありだがわちょう)」も人口減少から消滅危機が叫ばれる地域。 それを解決しようと「有田川という未来 ARIDAGAWA2040」という興味深いプロジェクトがはじまりました。 なんと、民間が旗振り役となって官民一体で地方創生を実現しようとしているのです。 しかも、それをサポートしているのが、全米で最も住みたい都市として有名な「ポートランド」というから、なおさら驚きなのです。
和歌山の小さなまちで、いったいどんな内容が実践されているの? どうやってあのポートランドと繋がったの? その疑問を解き明かすべく、「有田川という未来 ARIDAGAWA2040」仕掛人・有井 安仁(ありい やすひと)さんにインタビューをしました。
有井 安仁(ありい やすひと)さん プロフィール
1976年和歌山市生まれ。22歳の時、高齢者や障がい者などの自宅訪問理美容サービス「訪問理美容ハンズ」を立ち上げる。 現場での経験を通じて社会の仕組みをより良くする必要があると痛感し、社会的活動を展開しはじめる。 27歳の時に関わったわかやまNPOセンターでは事務局長、副理事長を務め退任。 2012年から社会的投資をデザインする会社「株式会社PLUS SOCIAL」や「地公益財団法人わかやま地元力応援基金」代表理事を担っている。
全米で最も住みたいまち「ポートランド」とは
ポートランドは、アメリカ北西部に位置する、人口約60万人のオレゴン州の中核都市です。 年々移住者が増え、2030年には100万人越えが予測されています。 40年前まで工業化による環境汚染から人口流出に苦しんでいましたが、立場に関わらず各住民の意見を積極的に取り入れる体制を行政が確立したことで、住民主体で官民一体となってまちづくりが進み、今やまちづくりの成功事例として注目を集めているほどDIY精神も強く、芸術都市としても有名です。
『有田川という未来 ARIDAGAWA2040』とは
和歌山県にある人口2万7000人のまち、有田川町。 この地域では年間8万2000トンの「有田みかん」が生産されています。そんな有田川は、出産適齢期を迎える若年女性の人口が急激に減っており、このままでは2040年に現在の約30%にあたる8000もの人口が減少すると予想されています。
その未来を変えるために、2015年7月に発足されたのがこのプロジェクト。 主な活動メンバーは、みかん農家・教師・大工など地元に拠点を持つ経営者・地元出身の大学生など様々。 さらに役場の若手職員も大勢巻き込んで、官民一体となって取り組みを進めています。 そこにサポート役として、ポートランド市開発局で働く日本人職員や、PLACE STUDIOというポートランドの現地企業に勤めるマネージャー陣などが加わって、度々アドバイスをしているのです。
彼らは定期的にチームで何度も集まり、まちを歩いて目で見て空気に触れ、「どの場所を拠点に」・「誰に向けた」・「どんなアプローチが必要なのか」について、仮説を立てていきます。そして、地域住人から参加者を募り、ワークショップを交えた大規模なイベントを開催して、まちの兆しとなりうる場所のリノベーション案や活用方法などを地域の皆で検討していきます。 そこから、さらに有志の実践部隊を新たにつくり、皆から出たアイデアの実現を進行していくという流れです。
ポイントは、これが行政発信ではなく民間発信だということ。 20代〜30代の若い地域住民が旗振り役となって地域と行政を巻き込みながら、この新たな挑戦を進めています。 これにより、柔軟な発想で試行錯誤をしつつ、スピーディに取り組むことができ、また当事者として地域に向き合うべき同年代の関心を多く集めることができているのです。