新しい年を迎えるにあたって、縁起物の食材、験を担いだ食べ物がいっぱい詰まったおせち料理を口にする人は多いと思います。
定番の具材は黒豆、数の子、くりきんとんなど、どの地域に暮らす人でも一緒だと思いますが、全国に目を向けると、ちょっとユニークな縁起物や験担ぎの意味を込めた食べ物・飲み物を口にしている地域が見つかります。
例えば、広島県では「ワニ」を験担ぎや縁起物として食べる文化があるのだとか。早速、各地で食べられている少し変わった、おもしろフードをご紹介していきます。
食べずに置いておく「にらみ鯛」/大阪府・京都府
まずは京都府や大阪府など、主に関西圏で親しまれている「にらみ鯛」を紹介します。
タイはもともと縁起のいい食べ物として、正月に各地で食べられています。その祝い膳(ぜん)に並ぶタイを関西では、手をつけず置いておく(にらむだけで、食べない)風習があります。
にらみ鯛は、塩をふった尾頭付きのタイの場合もあれば、塩焼きしたタイの場合もあります。前者の塩をしただけの生魚を飾るという意味でいえば、見せ魚(みせざかな)という文化の一種ともいえそうです。
1985(昭和60)年~2007(平成19)年までに掲載された記事を再編した2007年出版の『完全保存版 家庭画報のお正月 しきたりと料理』(世界文化社)によると、
<年越しの祝い膳に生の魚をのせ、箸をつけずにおき、元旦の朝に焼いていただく慣わし>(『完全保存版 家庭画報のお正月 しきたりと料理』(世界文化社)より引用)
が、日本各地にあるといいます。
別名でにらみ魚。やはり、この一種がにらみ鯛だと考えられます。
上述の雑誌では、福岡県のある家の正月料理が写真で掲載されていて、尾頭付きの生イワシが見せ魚として祝い膳の上に乗せられていました。
イワシは節分の日に飾られるなど、同じく縁起物の魚。各地で見せ魚(にらみ魚)は、実際に行われているのですね。