近年、日本国内のTwitterなどのSNSで“中国語っぽさ”をイメージして漢字のみでコミュニケーションを取る「偽中国語(ニセ中国語)」が流行りました。
しかもこの偽中国語、実際にに中国の人に見せてみると、なんとなく察して伝わる場合があるそう。さらに中国のSNS「Weibo(微博)」でもこの偽中国語が流行ったそうで、面白いかたちで文化の行き来が発生しました。
そんな漢字は、中国から日本が輸入したものですが、その後、日本人は漢字からひらがな、カタカナをつくり、さらに明治維新後は西洋の文明を翻訳する際に、従来の漢字を組みあわせて多くの言葉を生み出し、中国へ逆輸入されたものも多数あるのです。
そのなかにはすごく意外な話ですが、現在の中華人民共和国を支える「共産主義」という言葉も含まれています。いってみれば、西洋の考えを日本人が漢字を使って翻訳し、その日本で生まれた漢字の並びを、中国が逆輸入して中国語として使っているのですね。
ほかにもこのような例はいっぱいあります。そこで今回は、由来が日本にあると認められている言葉をいくつか紹介しましょう。
化石
最初は「化石」。福井県には年間93万人以上が訪れる「福井県立恐竜博物館」があります。
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この施設名にも使われている「化石」は、中国語で以下のように発音します。
アルファベットの上にある希望は、中国語のイントネーションを表す記号で、「hua↓」、「shi↑」と、語尾を調整しながら発音してみてください。
発音こそ異なるものの、化石の意味は中国語でも同じです。実はこの化石という言葉、日本が西洋の知識を輸入する際に新しくつくり、その言葉が中国に逆輸入されているのです。
化石は英語でfossil、ドイツ語でも一緒、フランス語でfossile、すべてラテン語のfossilisから来ています。意味は「掘り出されたもの」なので、
<地質時代の生命の記録の総称>(『広辞苑』(岩波書店)より引用)
という定義が本当です。氷漬けのマンモスも、fossilに含まれます。「石と化したもの」「石に変化したもの」ばかりでは本当はないのです。
当時の日本の研究者たちは、fossilという言葉で表現される物体が、すべて石と化した貝がら、骨、葉っぱ、生き物が生活した痕跡(生痕化石)ばかりだったため、「化石」という言葉をつくったのかもしれませんね。
当然、この手の新しい言葉は中国に入ったとき、中国人による再翻訳も行われました。しかし、
<漢字への堅いこだわりが中国学者たちのハードルになり、自由な発想で訳語づくりに挑んだ日本学者の勝利となった>(殷菁著『中国における和製漢語の受容』より引用)
といった背景も一般的にあったようです。その結果、日本人の学者がつくった言葉が、中国でも定着したのです。
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