2011年春。田舎から上京した私が初めて知った都会は足立区「北千住」だった

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初めての都会の味は280円のお弁当

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思い出の地をめぐっていると、懐かしの味も恋しくなってきます。当時、毎日のように学校帰りに立ち寄っていたのが、お惣菜がずらりと並ぶ「かざま」です。初めて知った都会の味といっても過言ではありません。

上京してすぐのころ、知らないお店に入る勇気もない私は、値段が分かりやすく表記されている「かざま」が都会のオアシスのように見えたのです。

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同店はテイクアウト専門店で、お弁当はなんと280円。お惣菜の種類もとても多く、揚げ物からサラダまでバリエーションが豊富です。

トンカツは180円、唐揚げは100グラム120円、サラダ類は100円から。金欠な学生時代は1グラム1円のサラダに何度も助けられてきました。

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1グラム1円のサラダ(100円)と大きな肉団子3個(90円)。お弁当(280円)と一緒に買ってもワンコインでお釣りがきます。学生はもちろん、北千住に住む人の胃袋を掴むお惣菜屋さんなのです。

  • かざま
  • 東京都足立区千住1丁目22-9

マック以外のハンバーガーを知った思い出の「サニーダイナー」

奥に見えるのが「宿場町通り商店街」右に行くと北千住駅 image by:赤池リカ

中学生や高校生のときと比べると自由度の高い大学生は、1年間同じクラスメイトと毎日過ごすわけではありません。多くの人はサークルや部活に入って精力的に活動しているみたいでしたが、サークルにすら入っていない私は、大学生らしい活動をすることなく過ごす日々。

その代わりに北千住の街を歩くのが大好きで、毎日のようにいろいろな道を散策していました。そんなとき見つけたのが、とあるハンバーガーショップでした。

「千住ほんちょう商店街」の向かいにある、「宿場町通り商店街」の一本左の道を入ると少し静かな通りが広がります。商店街とは違った雰囲気のこの通りは、当時の私の穴場スポット。お店が数件立ち並んでおり、人混みを離れたお散歩に最適な通りです。

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そしてこの通りにあるのが、私が初めてマクドナルド(以下・マック)以外のハンバーガーを食べた「サニーダイナー」です。

故郷でハンバーガーを食べる場所といえば、マック一択。少し街に出るとモスバーガーもありましたが、ほぼマック以外のハンバーガーを食べたことはありませんでした。もちろん田舎にハンバーガー専門店なんてありません。

初めてサニーダイナーを見つけたのはいつものように北千住の街をぶらぶらと歩いていたとき。アルバイトも始めたので、少しお財布に余裕ができてきたころでした。

最初、お店を訪れたときはまるで外国のような雰囲気に驚きましたが、メニューがシンプルで分かりやすく、田舎者にも優しいお店です。

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ほんのりバターの香りがするフワフワのバンズ。そしてジューシーなお肉は、かぶりつくと旨味たっぷり。しかも付け合わせのポテトはカリカリでクセになる食感。初めて食べたときの衝撃を忘れられず、定期的に通っていました。

サニーレモネード image by:赤池リカ

変わらない思い出のハンバーガーに癒されつつ、この日は赤ワイン入りの特製レモネードで喉を潤します。あのころより大人になって、「どんな味だろう」と考えていたお酒も飲めるようになったのです。

思い出の地をたくさんめぐり、懐かしの味に満たされたところで、そろそろ帰宅の時間。今回は上京したころを思い出す旅と称して自分の東京でのルーツを辿ってみましたが、なかには変わってしまった場所・閉店していたお店も少なくありません。

少し寂しさはありますが、すぐに現実を受け入れていたドライな自分がいて、「都会に染まってしまったのかな」と思うことも…。でも、お店が変わっても、北千住にはあのころとどこか変わらない空気が残っているようにも感じたのです。

友だちもいなくて、都心に出ることができなかった、上京当時。それでもひとりでいろんな初めてを経験した北千住は、確かに「都会」だったし、いまでこそ平凡な毎日を過ごしている私の土台を作ってくれた街でもあります。

大人になって楽しむ北千住の夜は、長くなりますよ。image by:赤池リカ

さまざまな顔を持つ東京を見てきて、北千住がいわゆる「すごい都会」というわけではないことも知ったけど。私の初体験が詰まったこの街に戻ったことで、また「次のもう一歩」を踏み出そうという前向きな気持ちに、確かになれたのです。

いまはこの街を離れて暮らしているけれど、北千住はより大人になったいまだからこそ、もっともっと楽しめる場所です。私は東京で、自慢できるような素晴らしい目的を見つけることができなかったかもしれない。でも、こんな素敵な街を見つけることができたんだと、今度友だちに話してみようと思います。

みなさんも、改めて自分の東京でのルーツを、少し思い出してみてはいかがでしょうか。きっといろいろな初体験と、再発見が見つかるはずですよ。

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  • ※本記事は2020年2月初旬に取材を行いました。
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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