アメリカの大手全国紙USA Todayのオンライン版に「ニューノーマルに適応するレストラン業界:2021年以降に飲食業界が変わる20個のトレンド」(和訳)と題する記事が2020年12月25日付で掲載されました。
その記事でトレンドのトップに挙げられたのが、「ゴースト・キッチンズ(Ghost Kitchens)」という、従来の飲食店とは異なる、客席がない形式のレストランです。
他にも「ゴースト・レストランズ」や「シャドー・レストランズ」、「バーチャル・キッチンズ」、「クラウド・キッチンズ」などさまざまな呼び名があります。
つまり、トレンドNo.1に挙げられながらも、新しすぎる概念であるために、いまだにはっきりとした共通定義がなされていないようなのです(本文ではゴースト・キッチンズで用語を統一します)。
今回はアメリカだけでなく日本でも「実態を持たないレストラン」として、コロナ禍で注目を集めるゴースト・キッチンズについてご紹介していきます。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
「ゴースト・キッチンズ」とは一体なに?
ゴースト・キッチンズは厳密にはレストランではありません。レストランもしくは料理人にキッチンのスペースと器具を貸し出す施設です。
通常、ひとつの施設にいくつものキッチンスペースが区切られていて、複数のレストランが「入居」しています。
しかし、ゴースト・キッチンズの施設には客席もカウンターも接客フロントさえもありません。顧客はオンラインでメニューから選んだ食べ物を注文して、自分で施設を訪れて持ち帰りをするか、宅配サービスを依頼します。
入居するレストランはレンタルしたキッチンのスペースと器具を使って食事を調理するだけ。注文を受けたり、支払いを受け取ったり、宅配サービスを手配するといった営業業務はゴースト・キッチンズの施設側が一括して引き受けます。
実は、コロナ禍の前から存在したトレンド
この記事を書いている2021年1月現在までに、アメリカでは新型コロナウイルス感染者数が2,000万人を越え、累計死亡者数も40万人以上、どちらも世界で最多の深刻な被害に見舞われています。
州や地域によって政策や対応はまちまちですが、自宅待機令や外出制限令が施行されているところが多く、市民生活は大きな影響を受けています。
筆者が住むカリフォルニア州でも「不要不急」とされる飲食店の営業は持ち帰りか宅配のみが許されるという状況が長く続いています。
ゴースト・キッチンズの営業形態はまさに持ち帰りと宅配に特化したものです。従って、新型コロナウイルス感染拡大によって成長を後押しされたという側面はあるものの、それだけではないとUSA Today紙の記事では解説しています。
もともと2020年以前から、アメリカでは従来通りのレストランでテーブルに座って料理をサーブされるよりも持ち帰りや宅配を好む人が増えていて、「ウーバー・イーツ(Uber Eats)」などのオンライン宅配サービスが急成長していたのもその現れだったということです。
つまり、ゴースト・キッチンズは新型コロナウイルス後に誕生した新たなトレンドというわけではなく、以前からあった流れが加速されたものだともいえるでしょう。
新型コロナウイルス収束後のニューノーマルでもゴースト・キッチンズはアメリカ国内で飲食業の本流になると見られています。
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