「ベースボール(Baseball)」がアメリカから日本に伝えられたのは、明治もごく初期のことでした。そのスポーツに「野球」という訳語をつけたのは俳人であり歌人でもあった正岡子規だったという説があります(注:異説もあります)。NHKで放映されたドラマ『坂の上の雲』でも、子規が友人の夏目漱石らと「ベースボール」を楽しむシーンがありました。
それ以降の長い歴史のなかで、野球は日本で独自の発展を遂げてきました。本場アメリカのベースボールとは別のスポーツになった趣さえあります。
しかし、野茂英雄氏がメジャーリーグに挑戦した1995年以来、野球とベースボールを隔てた垣根は以前よりずっと低くなってきました。
ところが、日本でよく使われている「野球用語」のなかには、もともとの英語から意味が異なってしまったもの、あるいは日本だけでしか使われていない独自のカタカナ語が多く含まれています。
現地でメジャーリーグ観戦を楽しむ観光客も、あるいは本場のベースボールに挑戦しようと考える選手たちも、そのまま使うと意味が通じないか、あるいは誤解を招いてしまうかもしれない言葉もありますので、いくつか紹介しましょう。
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同じ言葉だけど、まったく違う意味!?
デッドボール
日本ではピッチャーの投げたボールがバッターの身体に当たることを「デッドボール(死球)」と呼びますが、同じ言葉はアメリカではプレイが中断することを意味します。
例えば、送球がそれてダグアウトや観客席に飛び込むと、「デッドボール(dead ball)」になり、審判が試合を再開するまで、次のプレイには移りません。日本語の「死球」は、英語では「ヒット・バイ・ピッチ(Hit By Pitch)」といいます。
マネージャー
日本では選手でも監督やコーチでもない、チームの雑用を担当する漫画『タッチ』の浅倉南さんのような人のことを「マネージャー」と呼ぶことが多いですが、同じ言葉はアメリカでは監督のことを指します。つまり、新庄ビッグボスも原辰徳監督も英語では「マネージャー(Manager)」と呼ばれるのです。
ヘッドコーチ
日本プロ野球では監督の下でコーチ陣をまとめる役割を「ヘッドコーチ」と呼びますが、アメリカではヘッドコーチといえば、チームの最高指揮官のことを指します。打撃、走塁、投手などの専門を持たない、監督の相談役のような役割のコーチは「ベンチコーチ(Bench coach)」と呼ぶことが多いようです。
プレート
「プレートに立つ」と日本語でいえば、普通はピッチャーがマウンドで投球準備に入ることを想像しますが、アメリカでは特に説明がない限りは「プレート」とはバッターが打席に入ることを指します。
「大谷翔平はマウンド(on mound) でもプレート(at plate)でも大活躍した」と新聞などによく書かれますが、前者はピッチャー、後者はバッターとして出場したときのことを意味します。マウンド上の小さな板のことは「ピッチャーズ・プレート(Pitcher’s Plate)」または「ラバー(Rubber)」と呼びます。
ノック
日本野球では守備練習のためにコーチがボールを打つことを「ノック」といいますが、同じ言葉をアメリカ野球では試合中のバッターが強打を放つことを指します。「ノッカー」というカタカナ語も派生して生まれた和製英語だと思われます。
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