それ、誤解されるかも。アメリカで全く通じない日本野球の一般常識

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2022/05/04

誤用によって生まれた和製英語も?

リトルリーグ試合開始前の国家斉唱image by:

ツースリー

ストライクが2つ、ボールが3つ、は緊迫した場面ですが、英語で「ツースリー(Two-Three)」というカウントはあり得ません。アメリカ野球では日本とは逆にボールを先に、ストライクを後に数えるからです。

つまり、ツースリーなら、バッターはすでに三振してしまっているのです。球審が「ツーワン(Two-One)」といえば、それは2ストライク1ボールのピッチャー有利のカウントではなく、2ボール1ストライクのバッター有利のカウントです。

エンドラン

正しくは「ヒット・エンド・ラン」の略語ですし、英語の「Hit And Run」もほぼ同じ意味で使われています。しかし、「エンドラン」では全くの意味不明になってしまいます。

それに、なぜ「エンド」なのかも私には分かりません。一般的に「and」をカタカナで書くときは「アンド」ではないでしょうか。チャゲ&飛鳥は「チャゲ・アンド・アスカ」ですよね。「エンド」といえば、普通は「end」ですから、エンドランとはまるで走ることを終えたみたいです。

オーライ、ドンマイ

それぞれ、「オールライト(all right)」「ドントマインド(don’t mind)」をカタカナにして、しかもそこから省略した言葉だと思われます。

しかし、もしアメリカで野球をする機会があって、フライボールを追いかけるときに「オーライ」と叫んでも、エラーをしたチームメイトを「ドンマイ」と励ましても、多分どちらも意味は通じません。前者は「I got it」あるいは「ball, ball, ball!」と叫ぶことが多いですし、後者は「Nice try」や「Shake it off」と言った言葉が一般的です。

ゴロ、フライ

これらもそれぞれ「グラウンドボール(ground ball)」と「フライボール(fly ball)」のカタカナ読みをさらに省略したものだと思われます。

短くて、とっさにいいやすいので、アメリカでも新語として使ったらいいのにとも思いますが、実際に耳にしたことはありません。例えば、ピッチャーフライとかセカンドゴロという便利な(?)言葉は英語にはありません。どちらも「fly ball to pitcher」であるとか「groundball to second baseman」のように、長くなります。

タッチアップ

日本語ではフライボールがキャッチされてからランナーが進塁することを「タッチアップ」と呼びますが、英語では「タッグアップ(tag up)」といいます。発音が似ていることからの誤用かもしれません。


翻訳者を悩ます「ス」と「ズ」の使い方

アリゾナ州で行われたマイナーリーグのオールスター戦image by:

私はスポーツ系メディアでMLB関連の記事を書くことがありますし、英語から日本語へ翻訳する仕事もしているのですが、編集者や読者からよく指摘される間違いのひとつがチーム名のカタカナ表記です。

「Dodgers」って「ドジャーズ(スに濁点付き)」の方が現地の発音に近いと私は思うのです。しかし、私が何回そう書いても、「ドジャース(スに濁点なし)」に編集で変更されます。「エンジェルズ」の大谷翔平って何回書いても、「エンゼルス」に変えられます。「ヤンキーズ」ではなく、「ヤンキース」だとお叱りを受けることもあります。

「ズ」でも「ス」でも所詮はカタカナ表記です。英語の発音とは厳密には異なるわけですので、別にどちらでもいいことだと考えていますし、特に強い拘りがあるわけではないのですが、気が付くと同じ間違いを繰り返しています。

多分、角谷からの原稿が来たら、ズをスに変換しておけって編集部の申し送り事項があるのではないでしょうか。

それでも、「Angel」はともかく、「Dodger」とか「Yankee」とかは本来は威勢のいい言葉です。濁点をつけた方がきっぱりと力強く響いて、チーム名には相応しいと、個人的には思います。ドジャースとかヤンキースって語感は、何やら力が抜けたように感じてしまうのは私だけでしょうか。

長い歴史と伝統がありますので、人気チームの阪神はいまさらタイガースというチーム名を変更するべきではないでしょう。しかし、デトロイトにあるチームは「タイガーズ」と呼ばないと、語感から来る迫力が半減してしまうような気がします。

だって、「マリナーズ」を「マリナース」って呼ばないし、「レッズ」を「レッス」って呼ばないし、「キャンディーズ」を「キャンディース」って呼ばないじゃないですか。

  • image by:角谷剛
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角谷剛(かくたに・ごう) アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。

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