京都ノスタルジー!歴史的土木構造物「土木遺産」の世界
四季折々の美しい風景や歴史ある社寺仏閣、ノスタルジックな建築物など、魅力あふれる京都の風景。世界遺産など数々の貴重なものが多いことでも知られていますが、その中に「土木遺産」と呼ばれる歴史的土木構造物があることをご存じでしょうか?
今回は人々の生活を支えてきた京都府の土木遺産に注目してみました。
土木遺産って何?
「土木遺産」とは、主に日本国内に現存する明治時代から昭和の初期につくられた生活基盤施設のことで、それらの保存を目的として、2000(平成12)年に公益社団法人土木学会という技術者コミュニティによって創設された制度です。
現在も活用されているものから、その役目を終え歴史的文化財として保存されているものまで、当時の職人たちの技術や知恵を集結して造られた土木施設を、国土や地域に貢献した財産と位置付けて、推薦や一般公募によって、年間約20件が選出されています。
それではその一部をみていきましょう。
京都府の土木遺産にはどんなものがあるの?
【木津川市】関西本線木津川橋梁
京都府南部の木津川に架かる「関西本線木津川橋梁」は、明治30(1897)年に造られた三角形状の骨組みが特徴的なトラス構造の橋です。
現在はJR関西本線の橋梁ですが、元々は明治五大私鉄のひとつ、関西(かんせい)鉄道の鉄橋として架けられました。
大量の荷物や乗客が運べる大型蒸気機関車が製造されると、その重さに耐えられる橋梁にするために改良が重ねられ、今も現役で使われています。
「明治時代に架けられた橋梁を、適切な補強や更新により長寿命化を実現した点で、優れた事例として顕彰すべき施設」として、2021(令和3)年に土木遺産に認定されました。
橋梁エンジニアで愛橋家の丹羽信弘さんに聞く「関西本線木津川橋梁」の詳しいお話はこちら↓
【八幡市・久御山町】上津屋橋(流れ橋)
「わが国で屈指の大規模な木造流れ橋で、コスト縮減を図りつつ風情ある景観を保つ取り組みが続けられている優れた土木遺産」として2019(令和元)年に認定された「上津屋橋(こうづやばし)」。
京都府南部にある八幡市と久御山町を結ぶ橋として木津川に架けられた、全長356.5m×横幅3.3mの木造橋は、日本最大級の大きさを誇り、現在も歩行者専用道路として活用されています。
丸太で組んだ橋脚の上に橋桁を渡した素朴な形状の橋は、河川の水位が上昇すると橋桁が水面に浮き、いかだのように流れることで橋全体の崩壊を防ぐことができます。
橋桁・橋板は橋脚とワイヤーロープで繋がれているので流失することはなく、水位が低下した後に流れた橋桁・橋板を再び橋脚にのせることで復旧できる構造となっています。この特徴的な構造から、通称「流れ橋」とも呼ばれています。
時代劇のロケ地としても有名!「上津屋橋(流れ橋)」記事についてはこちら↓
【京都市・亀岡市】嵯峨野観光鉄道の構造物群
2019(令和元)年に「京都鉄道の敷設に際して建設されたもので、格調高い意匠性とともに、観光資源としても活用されている優れた土木遺産」として認定された「嵯峨野観光鉄道の構造物群」。嵯峨野観光鉄道は、トロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅までを結ぶ全長7.3kmの観光列車です。
前身である明治時代の京都鉄道のころに造られた古いレンガ積みのトンネルや保津川の絶景、四季折々の風景を楽しむことができる人気の路線ですが、建設当時は保津峡の景観を損ねないよう川沿いの断崖に線路を敷くなど難工事だったそうです。
五感をフルに使って楽しむ「嵯峨野トロッコ列車大解剖」記事はこちら↓
【宮津市】由良川橋梁(ゆらがわきょうりょう)
「建設当時国内最多径間を誇るコンクリート橋脚の鈑桁橋梁であり、築後90年を経るも保存状態が極めて良好である貴重な土木遺産」として2015(平成27)年に認定された「由良川橋梁」。
京都丹後鉄道・丹後由良駅と丹後神崎駅の間にある由良川の河口に架かる全長約550mの橋梁は、のどかな風景に溶け込む無機質な構造物が、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
また、水面からわずか6mの高さに軌条があることから、車内からはまるで水の上を走っているような風景を見ることができます。
映画のワンシーンを切り取ったような美しい「由良川橋梁」記事についてはこちら↓
【亀岡市】王子橋
亀岡市に位置する保津川支流の鵜ノ川に架けられた「王子橋」は、明治17年に造られた長さ28.5mの石造のアーチ橋です。
2007(平成19)年に「田邊朔郎設計の石造アーチ橋で、輪石と壁石が夫婦天端で一体化した非常に珍しい構造形式をもつ道路橋(現在は人道橋)」として土木遺産に認定されています。
田邊朔朗は琵琶湖疏水の水路閣を設計したことでも知られる土木技術者です。
王子橋は、通常、アーチ状の部分(輪石)を大きな石を合わせて作るのに対し、小さな石を4つ組み合わせて盾のような形に整え、そこから壁石と面で繋がっているのが特徴。使用されている石材には地元で採られた花崗岩が使われています。
「王子橋」の歴史もチョイ堀りした記事はこちら↓
【京都市】梅小路機関車庫
「梅小路機関車庫」は京都駅の隣、梅小路京都西駅すぐ目の前にある「京都鉄道博物館」内にあります。
「大正3年設置以来、日本の近代化と復興・成長を支えた蒸気機関車の歴史を伝え、動態保存された世界最大級の蒸気機関庫である」として2004(平成16)年に認定。
東西に扇形を描くように建設された扇形(せんけい)車庫は、美しい放射状の引込線が特徴。現存する最古の大型鉄筋コンクリート造機関車庫として国の重要文化財にも指定されています。
梅小路機関車庫のある「京都鉄道博物館」の詳しい記事はこちら↓
土木って実はスゴイ事業!注目したい土木の魅力
生活基盤施設としての役割だけではなく、その景観も含めて魅力的な土木構造物。この魅力に気付いたら、実際に現地を巡ってみたくなりませんか?
現地に行かれた際におすすめしたいのが、土木構造物の魅力をギュッとまとめた「土木カード」の入手です!
各施設を管理する事務所や現場見学会などのイベントで入手することができますよ。実物を見て、思い出と一緒にカードをコレクションしてみるのはいかがですか?興味が湧いた方は、毎週カードを紹介しているInstagramも要チェックです。
さらに土木の魅力にハマった方は、こちらのサイトもチェックしてみてください。
京都府では、建設業の魅力を発信していくために「京都府建設業魅力向上プロジェクト」を立ち上げ、さまざまな取組を進めています。このサイトでは建設業界で活躍する若手技術者の体験談や現場の魅力などを公開しています。
普段見ることができないトンネル工事の様子なども公開されているので、とても興味深いですよ。
土木カードと京都府建設業魅力向上プロジェクトについてはこちら↓
■■記事協力■■
京都府 建設交通部 指導検査課
■■出典■■
- source:KYOTO SIDE
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