台湾で「神様」になった日本人・小林三武郎氏の数奇な運命
日本統治時代の台湾には、こうした偉人伝が数多くありました。
その中の一人として、台湾の宜蘭で土地神様として祀られている小林三武郎という巡査がいたことが、最近判明しました。
小林巡査とはどういう人物だったのか。以下、日本李登輝友の会愛知県支部の記事を引用します。
「小林三武郎巡査は名古屋出身で、日本統治時代に宜蘭で森林警官として勤務した人物だ。森林警官は台湾檜や樟脳の材料となる楠の違法伐採を取り締まる役職だ。また当時の警官は農業や畜産の指導もしていた。
あるとき、農民がニワトリ・ブタ・鴨などの家畜の種付けしようとしたが、なかなか上手くいかなかった。成功しないと生活が苦しくなるので、その農民は心底困っていた。
不憫に思った小林巡査は、本来禁止されている役所所有の家畜を内緒で農民に貸して種付けを試みた。一回で成功しなくても『もう一回! もう一回!』と繰り返し成功するまでこっそり家畜を貸し出した。いつの日か小林巡査は『もう一回さん』として地元農民に親しまれるようになった。お役所的なルールを曲げてまで、台湾の農民の生活を守ろうとしたのだ」
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台湾の自由時報でも、2013年に小林巡査の紹介記事が出ていますが、そこには日本語そのままの発音で「摸一蓋(もういっかい)」さんと紹介されています。
小林巡査は現在、土地神様として宜蘭の太和村という所に建てられた小さな祠の中で祀られていますが、台湾の報道によると、この祠についての後日談があるそうです。
彼を祀った祠がある土地の地主が、土地を売ろうとした際に、小林巡査が夢枕に登場して「祠を移して欲しくない」と言ったそうです。また、祠があまりに粗末なため、大きな廟に祀ろうとしても実現しなかったそうです。それはなぜなのか。
報道によると、小林巡査が夢枕で、日本の親族を探して欲しいとも言っていたため、現地では彼が故郷に戻りたいのではないかとの憶測もあるとのことです。この報道を受けて、日本側でも彼の親族を探す動きが出始めています。
森川巡査にしても小林巡査にしても、後に夢枕に出てきたという話が登場しますが、台湾ではまだまだこうした信仰は根強く残っています。特に田舎のほうでは、質素な日々を彩る要素としての信仰が根付いており、小林巡査の祠がある土地の地主夫婦に昔の話を聞きに行けば、喜んで話をしてくれることでしょう。
そうした話には、史実にどれだけ尾ひれがついているか分かりませんが、彼らの生活の一部として、日本人巡査の話が神話のように語り継がれていることに、なんとも言えない歴史の不思議を感じます。