英語の留学先として人気のフィリピン、現地の語学マーケット事情は?

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2018/03/15

海外のメディアで報じられたニュースを中心に解説する、無料メルマガ『山久瀬洋二 えいごism』の著者である山久瀬さん。今回はフィリピンのパンガシナン州の州都であるリンガエンへ出張し、現地の語学マーケット事情について詳しく説明しています。

『英語が公用語』のフィリピン、その語学マーケット事情とは

【海外ニュース】
Filipino is also designated, along with English, as an official language of Philippine. It is the standard resister of the Tagalog language. Tagalog is among the 185 languages of the Philippines identified in the Ethnologue.

訳:フィリピン語はタガログ語を標準化した英語と並ぶフィリピンの公用語。とはいえ、タガログ語はエスノローグ(世界の言語についての出版物)によって認識されている、フィリピンで喋られる185の言語の中の一つの言語なのだ。(ウィキペディアより)

マニラから、北に車で6時間リンガエン(Lingayen)という町にきています。これですでに3回目の出張となります。マニラから北に伸びる高速道路を2時間半、そこから右手にゆるやかな山並みを見ながらのどかな田園と村や町を抜けて西へと車を走らせます。

最初のとき、平日の朝出発したために、マニラ市内の渋滞にはまり、7時間以上かけて現地にはいりました。それに懲りて、今回は日曜日の早朝にマニラを出発。途中までは実にスムーズでした。しかし、高速道路を降りて、一般道を走行すると、まず葬式の車の列、次に道路工事の渋滞、さらに教会などの様々なセレモニーの車の列にぶつかり、何度ものろのろ運転を強いられます。地方都市は日曜日の方が渋滞が激しいというのもの皮肉なものです。

リンガエンは、パンガシナン州(Pangasinan)の州都です。そこはリンガエン湾に面して長い浜辺が伸びる風光明媚な地方都市。魚の養殖のみならず、木製の家具の産地としても知られています。第二次世界大戦では、日本軍とアメリカ軍とが激しく交戦した場所としても知られています。

ここでの仕事は、質がよく、真面目に働いてくれるスカイプ英会話の先生を発掘することです。今、日本では英会話の先生が求められています。児童英語や中高校生向けの会話指導、さらには英文添削ができる人材が不足しているのです。

フィリピンはもともとアメリカの植民地であったこともあり、多くの人が英語をしゃべります。そもそもフィリピンを構成する8,000もの島々は、それぞれに独自の文化があり、場所によって言語が異なります。英語がフィリピン全土で共通に話される言葉であるといえば、多少誇張になりますが、それもまた現実です。

元来、フィリピンの共通語は、マニラ周辺で話されるタガログ語でした。実際、タガログ語は、フィリピン人に共有される言語として改良もされ、今ではフィリピン語という名称が与えられました。

しかし、フィリピンにはタガログ語とは文法も表現も異なる様々な言語が共存しています。そんなフィリピン人にとって一応第二言語とはいえ、英語は全国レベルで公の場所で通じる言語にほかなりません

ただ、フィリピン人の英語がいわゆる英語を第一言語として使用する国と同じく質の高いものかというと疑問が残ります。
最近セブ島などで日本とスカイプで結ぶ英会話講座を多くみかけますが、確かに日本人のスピーキング力をつけるためには彼らは最適な人材でしょう。児童英語の場合は特にそうで、フィリピンの人々の明るい気質は、児童に楽しみながら英語を学ばせるには最適です。しかし、多くのフィリピンの講師が発話と同じレベルで読み書きが堪能かといえば、それは事実ではないのです。


そこで、英語の4技能に全てに対応出来る優秀な人材を発掘するために、はるばるリンガエンまで出張するのです。それには理由があります。
フィリピンもマニラやセブといった都市部はアジアの他の地域と同様で、より高い賃金を求め、人が頻繁に転職します。人材マーケットの競争がだんだん激しくなってきているのです。しかし、パンガシナン州のような遠隔地になれば事情は異なります。 しかも、ここで暮らす人々は、家族を支えるために勤勉に働きます。英語のレベルも人によってはかなり高く、今一緒に活動している人たちは、アメリカ人の英語講師と比較してもひけをとらない総合的な英語力をもっているのです。

リンガエンで働くある英語の講師の家を訪ねました。彼の住む村は市内から車で30分ほど。そこには水道もなく、人々は井戸水で生活しています。川に面した村の主要な産業は農業と川での漁業。人々は椰子の葉を編んだ屋根の家で生活しています。村には小学校しかないために、優秀な生徒はリンガエンで中等、高等教育を受けるのです。そして英語の先生になって公立高校で教鞭をとることが、彼らにとっては最高のステータスシンボルというわけです。

フィリピンは3月を過ぎると熱くなり、4月から5月にかけて熱暑に見舞われます。そんな南国の強い陽射が傾く頃、リンガエンでの仕事のあと、隣町のダグパン(Dagupan)の宿に泊まります。

翌朝、仕事の前にそこの魚市場を訪ねました。朝水揚げされた見事な魚があちこちで威勢よく売られていました。リンガエンまでのタクシーの運転手にその話をすると、彼も副業で魚の養殖をしているとのこと。複数の仕事を持って生計をたてるのは、フィリピンではごく当たり前のことなのです。

英語教師の多くも例外ではありません。物価はだんだんと上がるものの、賃金が追いつかない。それはマニラなどの都会に限らず、こののどかな地方都市でも同様なのです。

  • image by: Shutterstock,山久瀬洋二 
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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