まるで紅葉の雲海。秋に美しさを増す、京都「東福寺」の歴史と魅力
「東福寺」は京都五山第四位の寺
東福寺は九条道家が造営の際に、奈良の東大寺と興福寺の二大寺院の名から各一字を採って名付けたと伝わります。
東福寺の完成には、1236年~1255年まで19年の歳月を費やされたといいます。道家は、宋から帰国して間もない円爾を招いて開山にあおぎ、東福寺に迎えいれました。
東福寺は京都五山の第四位に列せられ、第五位の「萬寿寺(まんじゅじ)」は現在東福寺の塔頭のひとつとなっています。三門は、南北朝時代に建てられ、日本最古の三門で国宝に指定されています。
三門を外側から支える四方の柱は、天正の大地震のときに大修理をした際、豊臣秀吉によって施されたもので「太閤柱」と呼ばれています。
勅使門横にある「東司(とうす)」は、かつての禅僧のトイレです。東福寺の東司は室町時代前期の遺構で日本最古のもので、重要文化財に指定されています。
国宝に指定されている「龍吟庵」
「龍吟庵(りょうぎんあん)」は、東福寺の塔頭で国宝に指定されています。かつては南禅寺の開山・無関普門(むかんふもん)の住坊だった場所と伝わります。龍吟庵の方丈庭園は、「八相の庭」と呼ばれています。
「八相の庭」は、お釈迦様の生涯の8つの重要なできごと(八相成道)にちなんで名づけられた方丈の東西南北にある4つの庭の総称です。ほかの禅寺の方丈庭園と違って、方丈の四方に庭園を持っているのが特徴です。
南庭は砂紋によって八海を表し、巨石によって四仙島を表現しており、作庭家・重森三玲によって造営された枯山水庭園です。北庭と西庭は、敷石とコケを用いた市松模様を配した現代的な雰囲気の庭園です。
東福寺には周辺に25の塔頭寺院があり、なかでもこの龍吟庵は美しい和の雰囲気をもつ紅葉を見ることができます。
また、すぐ近くにある東福寺の塔頭「光明院(こうみょういん)」は、紅葉の穴場スポットなのでぜひ足を運んでみてください。
ゆったりとした時間が流れる「光明院」
光明院は、東福寺の本堂から三門を通り、勅使門を出てすぐのところにあります。観光寺院ではないので、普段はとても静かなお寺です。
光明院は、東福寺の塔頭で「虹の苔寺」とも呼ばれるほど落ち着いた雰囲気。
初夏にはサツキ、ツツジ、キキョウなどの花が咲き、庭全体が虹色のような鮮やかな色彩に包まれる様子からそのように呼ばれるようになったといわれています。
方丈前に広がる枯山水庭園は「波心庭(はしんのにわ)」で、昭和の作庭家・重森三玲の作庭です。
白砂と苔の上に石を配した波心庭と真っ赤な紅葉が重なる様子はとても癒されます。方丈の内側から丸い「悟りの窓」越しに見る紅葉もベストスポットのひとつ。
この庭園は寺名の「光明」をテーマに、大海原を表す白砂と巨石が光のごとく林立するイメージを基に作庭されたのだとか。
白砂、巨石ときれいに刈り込まれたツツジの庭と、真っ赤な紅葉のコントラストはまさに秋の京都らしい景色です。東福寺に行かれる際は、ぜひあわせて立ち寄ってみてください。
東福寺の歴史的背景、格式ある禅寺としての魅力、塔頭の龍吟庵、光明院の見どころなどをご紹介しました。この秋、ぜひ京都を訪れる際には、東福寺に行ってじっくりと時間をかけてその素晴らしさを堪能してみてくださいね。
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