まるで紅葉の雲海。秋に美しさを増す、京都「東福寺」の歴史と魅力
紅葉の美しさは「桜の木」に隠されていた?
東福寺は鎌倉時代に、摂関家の九条兼家(かねいえ)によって造営されました。臨済宗東福寺派の大本山で、京都最大の「伽藍(がらん)」を誇ります。
この伽藍とは、山門、法堂(はっとう)、本堂、金堂、方丈、東司(とうす)、鐘楼(しょうろう)など、境内の主要な建物の集まりのことをいいます。
通天橋の眼下に広がる紅葉の海は、おなじみの景色となりましたが、この渓谷は「洗玉澗(せんぎょくかん)」といいます。紅葉の雲海はまさに絶景ですよね。
もうだいぶ前になりますが、JR東海が2000年の秋に『そうだ、京都行こう。』というCMで東福寺を紹介しています。当時のキャッチコピーは「六百年前、桜を全部切り取りました。春より秋を選んだお寺です。」というものでした。
その通り、東福寺には桜の木がありません。これには理由があります。
東福寺には京都三大涅槃図のひとつといわれている「釈迦涅槃図」があります。この絵を描いた東福寺の画僧・吉山明兆は、当時室町幕府4代将軍・足利義持に、絵の褒美として桜の木を切ることを頼んだそうです。理由は、花見で人が大勢来るような寺では修行の妨げになるというものでした。
そんな高潔な僧だった明兆の願いとは裏腹に、現代では春は静かでも、秋は修行どころではない騒がしさでしょう。
桜の木を全て切って代わりに植えられたカエデは、東福寺の開山・円爾弁円(えんにべんえん)が宋(中国)から持ち帰ったものだと伝わっています。
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