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もう一度、泊まりたい。温泉好きが愛する秘湯の一軒宿「白根館」の復活を願う

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2021/10/08

1日の疲れを癒すお風呂時間は、至福のとき。ちょっと贅沢したいときには温泉に行くのもご褒美になっていいですよね。各地には有名な温泉地が多くありますが、あまり知られていない「秘湯」も見逃せません。

ですが、コロナ禍ということもあり、温泉旅行に行くのも厳しいのが現実。そこでご紹介したいのは、コロナの影響で宿泊営業が終了した山梨県にある秘湯「白根館」です。筆者が体験した気持ちいい温泉、名残り惜しい魅力をお伝えします。

※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。

あの感動をもう一度。山梨県奈良田温泉「白根館」

今回は、2020年2月末に惜しまれつつ旅館営業(宿泊営業)を終了した山梨県奈良田温泉「白根館」を取り上げたいと思います。

僕は渓流釣りもやるので、早川水系での釣りの時などに何度かここに泊まったが、かつてはマタギのご主人父子が獲ってくる猪鍋や鹿刺しなど、天然ジビエ料理が美味しかったです。

しかし現在は日帰り専門になって、名物ジビエは楽しめなくなってしまっています。 時は初秋、この原稿を書いている途中で、事務所の外の方から、セミが「つくづく惜しい」と泣きました。

旅館閉業の理由は人手不足とのこと。姉妹館である十谷上湯温泉「源氏の湯」も同様の理由で、完全に閉館してしまいました。 ともにめちゃくちゃに好きな宿だったので、ただ、無念です。

どちらの宿も、まさしく人外魔境というか、本当の秘湯で、それなのに快適で飯もうまかった。 部屋は空いていてもお客を取れないほど、人手が不足していたと聞きました。

「源氏の湯」なんか、あのぬる湯の極上の湯はどうなっちゃっているのだろうかと思うと、仲間を集めて復活させたいくらいです。 この記事を読んで、ぜひにでも、お金は貸すから宿を復興してほしい、というかたがいたらぜひともメールをください!

さて、奈良田温泉「白根館」は、早川渓谷をほとんどどん詰まりまで遡ったダム湖のほとりにある一軒宿です。「七不思議の湯」を謳っていますが、これは日によってお湯の色が変わるからです。 ある時には透明、またある時には完全な白濁湯に変化します。 それもまたリピートしたくなる所以です。


そうして、ここも「日本秘湯を守る会」の会員宿です。 立地からすれば紛うことなき秘湯であり、玄関先の、例の大きな提灯も似合う施設です。

秘湯を守る会の提灯が下がった玄関 image by:飯塚玲児
同じ玄関を、少しアングルを変えて撮影してみました。 ちょっといい雰囲気 image by:飯塚玲児
館内には囲炉裏のロビーがあって、アマチャズル茶のサービスがある image by:飯塚玲児

しつこく「秘湯を守る会」の会員宿であることを書いたのには理由があります。 実は僕には、ここの社長に大きな恩義があるのです。

その昔、『温泉失格』(徳間書店)を書いたとき、巻末付録の「安心安全な温泉施設100」を付けようと、僕はあちこちの極上泉に取材依頼のファックスを送りまくっていました。

そのころの僕は温泉ライターとしてはまだまだ今よりもずっと無名で、しかも出す本のタイトルが『温泉失格』。掲載協力をお断りされてしまった施設もかなりあったのが事実です。

この「秘湯を守る会」には極上湯の施設や宿が多いので、どうしても紹介したい施設にリストアップされることになります。そんなときに、この秘湯を守る会の幹事会が行われたんだそうです。

その会議のなかで「飯塚玲児というライターから『温泉失格』に載せたい旨のファックスが結構来ているようですが、これは、当会として全部断ったほうがいいかどうか」という恐ろしい議論が議題に上ったのです。 無論、全部まとめて断られてしまったら、かなりの名湯が外れたことでしょう。

しかし、紛糾するこの議題について、白根館の社長が鶴の一声で「いいんじゃないですか?各施設の判断で」といってくれたというのです。

この話を、当時幹事だった北海道丸駒温泉の佐々木社長から直に聞きました。マジでヤバかった。この鶴の一声がなかったら、拙著もかなり中身の薄い本になっていたことは間違いないです。白根館の深沢社長には心から感謝申し上げる次第です。

とはいえ、決してそのようなエピソードがあるからオススメするのではまったくなく、ここのお湯は本当に素晴らしい。浴室には、まず男女別の内湯があり、ここも薄暗くて雰囲気があって、大変好きな湯です。ただ、取材の際にはお客様のご都合もあって撮影ができませんでした。

一方、露天風呂は2カ所を共に撮影してきました。一方は木造りの露天風呂、もう一方は湖を眺める石造りの露天風呂です。

僕が最高に気に入っている木造りの露天風呂 image by:飯塚玲児
こちらは石造りの開放感ある露天風呂。 目の前に湖を望む image by:飯塚玲児

泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉でpH8.8、源泉温度47.8度、源泉100%かけ流しですが、季節によって熱交換器による温度調節をしています。ぬるつるとした肌触りの湯と硫黄の香りが実に素晴らしい。檜造りの内湯はかなりぬるめだった記憶があり、気持ちよすぎてなかなか出られませんでした。

僕は渓流釣りをして宿に入って湯に浸かり、湯上がりのビールを飲むと、もう運転できないので帰ることもできません。 何とかして宿泊営業を再開させていただきたいと願っています。

先日メルマガでご紹介した北海道千歳市の「丸駒温泉旅館」も、民事再生法を申請したとの情報が入ってきました。 コロナの影響が大きいのだそう。

今回のコロナ禍のもっとも切ない実態は、こうした秘湯の一軒宿にまで存亡の危機が直撃していること。僕なんぞは自分の事務所の存続も怪しいくらいであり、メルマガでその魅力を紹介するくらいしかできないのですが、志あるお金持ちのかた、ぜひとも音頭をとって、宿泊再開、あるいは姉妹館の「源氏の湯」の復活に尽力してほしいです。

「源氏の湯」が復活するのであれば、僕がプロデュースすることも厭わないです。あのぬる湯の名湯にもう入れないと思うと悲しくて仕方がないんです。どうぞよろしくお願いいたします!

  • 白根館
  • 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344
  • 営業時間10:30~16:00(受付終了15:30)
  • 公式サイト
  • 2020年2月末で宿泊業務は終了。同年3月4日より「日帰り温泉」のみ営業しています。
  • image by:Shutterstock.com※イメージです。
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
  • ※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの海外渡航・入国情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
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愛知県生まれの紀行作家、郷土料理写真家。編集部記者として月刊誌の編集に携わりながら全国各地を取材。『クチコミおでかけ旅情報』編集長、創刊50年を誇る現役最古の旅行雑誌『月刊旅行読売』の編集長を歴任したのちに退職、独立。これまで編集した雑誌や情報誌は数100冊、過去に泊まった宿は800軒余、入浴した温泉は3,000湯を超える。

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