スリランカの古代都市。天空の王宮跡、世界遺産「シギリヤロック」の絶景をもとめて
「インドの涙」という美しい異名を持つ国スリランカ。インドから東南、海に囲まれた小さなドロップ型の国がスリランカです。
日本ではここ数年海外旅行先としての人気が高まっており、女性同士の旅先やバックパッカーたちに選ばれる定番となってきました。
緑があふれる美しい景観、美味しい食事、癒しのアーユルヴェーダと人気が出るのも納得の素敵な国ですが、忘れてはいけないのが世界遺産。
スリランカには8つの世界遺産がありますが、そのなかで最も人気を集めているのが「シギリヤロック」でしょう。切り立った岩山の上に残された歴史遺産は悲しい物語を秘めています。
目次
世界遺産「シギリヤロック」の歴史

シギリヤロック、またはシーギリヤロックと呼ばれるスリランカの世界遺産。緑豊かな大地に突如現れる大きな岩、その上に刻まれた遺産は、かつてこの場所を中心に栄えた王朝があったことを示しています。
地上200mの切り立った岩の上には、かつて宮殿があった跡と広々とした庭園跡、住居跡などが残されています。
垂直に伸びる岩の上に宮殿が造られたなんて、いまとなっては信じられません。どうしてこのような場所に宮殿が造られたのでしょうか。
シギリヤロックが築かれたのは5世紀ごろといわれています。王様が住む場所といえば広々とした広大な敷地に豪華絢爛な建築物、そしてその宮殿を中心に華やかな街が栄える、というのが定番ですよね。
しかし、シギリヤロックを造ったカッサパ1世は街を下に見下ろす岩の上に宮殿を築きました。このカッサパ1世の人生そのものがシギリヤロックの建築に深く関わっているのです。
造ったのはカッサパ1世。繁栄と衰退
カッサパ1世は王の父と、庶民出身の母の間に生まれました。長男であったカッサパ1世は王家を自分が継ぐものと思っていましたが、彼の下には弟がひとり。その弟の母は身分も高く、自分の王位継承が脅かされるのではないのか?と不安になります。
王が自分を選ばないのではないのか、弟に王位を奪われるのではないのか?と疑心暗鬼になったカッサパ1世はクーデターを起こし、実の父親である王を殺害し弟を追い出し、無理やり王位を継承します。

自分が望んだ王になったのにも関わらず、今度はカッサパ1世は全く幸せではありませんでした。
父への弔いの気持ちと共に湧き上がって来たのは、国外へと追放した弟のこと。弟がいつか自分の国へと攻めてくるのではないか、という恐怖と戦わなければいけませんでした。
そしてその恐怖と不安が簡単には攻め込まれないシギリヤロックに宮殿を築かせることになったのです。
カッサパ1世はいまのシギリヤエリアに首都を移し、シギリヤロックの頂上に宮殿を造りました。高い位置から360度を見渡せるシギリヤロックは国の防衛のため、自分の身を守るために最適の場所だったのです。
しかし、カッサパ1世の不安は的中。国外で兵を挙げた弟に敗北し、その生涯を閉じます。シギリヤはその後衰退し、その跡のみが残されているのです。
シギリヤロックに入場!料金・注意点は?

シギリヤに到着したらすぐに大きな岩が目に入ります。そこがシギリヤロック!まずはチケットカウンターへ行き、チケットの購入をしましょう。
チケットは予約は必要なく、カウンターで購入可能です。外国人の私たちは36米ドル(約5,500円)とそこそこお高め。スリランカの物価から考えてみるとかなり高額ですが、十分に価値はあります。

チケットをチェックポイントでもぎってもらったら、中へと進んで行きます。中は広い庭園のようになっており、シギリヤロックの全貌が良く見えます。絶好のフォトスポットなのでぜひ撮影を。外国人観光客もとても多いです。
入ってみると白い猿がウロチョロ。かわいい姿ですが、近づかないようにしましょう。
シギリヤロックへは岩に沿って造られた細い細い階段を登って行きます。この階段は人が一人通れるくらいの細さなので、なかなか進みません。行列を避けることはできませんので、時間には余裕を持って並びましょう。
筆者が訪れた当時、シギリヤロック内には売店などはありませんでしたので、あらかじめ水分の用意をしておいてくださいね。スリランカの日中はとても暑いです。
最初の見どころ「シギリヤレディ」

大きな大きなシギリヤロック、頂上へは階段を登っていく以外に方法はありません。列ができているので少しずつしか進みませんが、それでもかなり体力が必要。日陰もないので暑さも相まって体力を奪われます。しっかりと体調を整えて臨んでくださいね。
細い螺旋階段を登っていくとチケットチェックがあり、その先に最初の見どころである「シギリヤレディ」が現れます。こちらは岩の壁に描かれたフレスコ画。美しい女性たちが描かれています。
どうやら昔は500体ほどのシギリヤレディが描かれていたそうですが、現在は18体に減ってしまっています。色鮮やかで優しい表情のシギリヤレディは妖精を描いたものともいわれています。
「ミラーウォール」を超えて進もう

シギリヤレディを見学して進むと、ゴツゴツした岩ではなく滑らかに整えられた壁が現れます。ここが「ミラーウォール」と呼ばれる場所。
かつて、対面の壁にシギリヤレディが描かれており、ミラーウォールに写り込んでまるで花道のようになっていたのだとか。
シギリヤレディは残されていませんし、姿が写り込んだりもしませんがしっかりと整えられています。かつての姿を想像しながら歩くのも醍醐味ですね。
「ライオンの入り口」に驚き!

ミラーウォールの先にある階段を登りきると広々とした場所に出るのでここで一休みを。頂上まではもう一息です。次に登っていくのが「ライオンの入り口」に設置された階段です。
現在、こちらは前足しか残されていません。昔はライオンの頭を模した大きな岩があり、口の中に入って頂上を目指す形だったといわれています。前足の大きさからも、その巨大さが想像できます。頭部が残されていたら!と思わずにはいられません。
それにしても、こんなに大きな物を造ることができたカッサパ1世の力はとても絶大だったのだと感じます。力があっても不安に苛まれた人生、この場所で何を思って11年という時間を過ごしたのかとても興味深く感じます。
頂上に到着!歴史に想いを馳せる絶景ポイント

ライオンの入り口から岩肌に取り付けられた鉄製の階段を登っていけば、頂上に到着です。最後の階段は結構急になっているので、高所恐怖症の方はできるだけ下を見ないように!
狭い階段を登りきると、平らに整えられた場所に王宮跡が残されています。想像より遥かに広大な場所で、シギリヤロックの大きさを目で見て感じられます。
景色も素晴らしく、通ってきた道が小さく見えます。確かにここなら攻め込まれたときに一目瞭然だったはず。しかし、逃げることはできなかったでしょう。
王宮跡は細かな階段がいくつも繋がっています。岩であるはずなのに緑もあり、なんだか不思議な空間。この頂上のもっとも高い場所にカッサパ1世は住んでいたとされています。
せっかくなら麓の博物館もおすすめ!

現在残されているのは王宮跡なので、かつての王宮がどのようなものだったかなかなか想像し難いのが正直なところ。
せっかく頂上に登るのですから、少しでも過去の風景を感じたい!という方におすすめなのが先に麓にある博物館に立ち寄るルートです。チケットを購入するのと同じ場所です。
麓の博物館には発掘されたものが展示されていたり、シギリヤレディのレプリカ、そしてかつての王宮の姿をCGで再現した映像が見られます。JICAの支援で造られた博物館で、CGのクオリティも高く一層見学が楽しくなりますよ。
日本からスリランカに行くには?

歴史を知ると、シギリヤロックにより一層興味が湧いて来ませんか?では日本からの具体的なアクセス方法をご紹介しましょう。
日本からスリランカへは成田国際空港から就航しています。行き先はスリランカの首都、コロンボにあるバンダラナイケ国際空港(コロンボ国際空港)で、フライト時間は約9時間ほどで到着します。
直行便は曜日が限られているので、マレーシアや香港などで乗り換えるのも一般的。その場合の所要時間は12時間から16時間程度となります。
到着するコロンボ国際空港はスリランカの南西の海沿いに位置しています。シギリヤ地方はコロンボから150kmほど北東の内陸部に位置しているため、フライトの到着時間によっては当日中に移動するのは難しくなるでしょう。
首都コロンボで1泊し、次の日にシギリヤロックを目指す旅のプランがおすすめです。
コロンボからシギリヤロックに行くには?
コロンボからシギリヤロックまではバス移動が一般的。シギリヤロックの最寄りの町ダンブッラを目指します。
コロンボ発のツアーもたくさん出ていますが、個人観光の場合はコロンボ・フォートのバスターミナルからダンブッラ行きのバスが出ているのでそれに乗車しましょう。
コロンボからダンブッラまでは約4時間の道のり。少々長旅になりますが、音楽のかかったにぎやかなバスの旅を楽しみましょう。
飛行機移動もある!
スリランカでの時間が少ない弾丸旅の方は、コロンボからシギリヤまでの飛行機を利用するのも手です。便数も1日に4便ほどと決して多くはありませんが、30分ほどでコロンボからシギリヤ空軍基地空港まで到着します。
空港からホテルまでは事前にツーリストカーを用意しておくようにしましょう。30分の移動なら、そこから直接シギリヤロックにも向かえますね。
ただし、スリランカの国内線は飛行機も小さく知名度も低いためコロンボ空港内で迷ってしまうことも。イーチケットを必ず携帯し、国際線を降りた瞬間から地上の係員に案内を頼んでくださいね。
ダンブッラからシギリヤロックへは?

ダンブッラに到着したら、そこからシギリヤロックまではバス利用かトゥクトゥクを利用します。バスも1時間に1本は出ているので便利ですよ。ダンブッラも世界遺産のある街ですから、1泊するのがおすすめのプランです。移動ばかりでは疲れてしまいますものね。
トゥクトゥクは街を歩けば声をかけられますし、ホテルで捕まえてもらうこともできるので心配いりません。40分ほどの道のりを経て、シギリヤロックに到着します。
今回はスリランカの世界遺産「シギリヤロック」をご紹介しました。世界中に数ある歴史遺産のなかでも異彩を放つ、特別な歴史を持つシギリヤロック。
カッサパ1世の人生は狂気に満ちたものでしたが、造られたシギリヤロックはスリランカの人々にもとても人気の世界遺産となっています。カッサパ1世の人生は私たちに人を信じる心の持ち方、多くを望まない生き方を教えてくれているのかもしれません。
スリランカの人々のように「ありのままがベスト」という考え方を改めて感じられる、そんな世界遺産への旅に出かけてみませんか。
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