知られざる穴場も。かつて立入禁止だった「金沢」の隠れた街歩きスポット

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2022/06/17

江戸時代の暮らしを感じる

image by:坂本正敬

もちろん、卯辰山山ろくのエリア散策では、予習をしておくと楽しめるスポットもあります。

例えば、「寿経寺」です。江戸時代は上述したとおり立ち入り禁止だった卯辰山に約2,000人の民衆が登り、金沢城へ向かって大声で困窮を訴えた「安政の泣き一揆」という大事件があります。後に斬首された(獄死した)その首謀者たちの冥福を祈った地蔵が寿経寺にあるのです。

「加賀100万石」と、いまでも金沢の行政の人たちが誇りに感じて使う言葉の裏側では、苛烈な搾取と圧政があったと、石川・富山の各地でその痕跡が認められます。

そうした歴史の異なる側面を学べる歴史的スポットがこのエリアにも点在しているのです。

image by:坂本正敬

しかし、そうした予習がなくても、歩いていてとても楽しいのが同エリア。

高低差の変化、屈曲した街路の変化が歩くたびに楽しめますし、山ろくを上がっていくほどに、緑の多さも目立ち始めます。上って来た道をふと振り返った瞬間の金沢の展望にも見とれてしまうことも。

小さな渓流である「矢の根川」沿いに、地形に沿って誘われるままに歩いていると、そこかしこで花が咲き、野鳥がさえずっている様子に目と耳を楽しませてもらえます。

ウグイスの声が特に印象的で、周囲の町名が昔「鴬町」と呼ばれていた理由にも納得できることでしょう。

image by:坂本正敬

道標には、このように刻まれていました。


<この地はかつて幽谷で 鶯が多く鶯谷と呼ばれていたことにちなみ明治になってこの名がついた>

幽谷とは「山が深くて静かな谷」といった意味です。その土地に江戸時代と変わらずウグイスが暮らし、江戸時代の人と同じ声を令和のいまでも楽しめるのですね。

image by:坂本正敬

 

金沢を一望しながら日本茶スイーツで一息

真ん中の白い民家が「金沢茶寮」image by:坂本正敬

卯辰山山ろくの散策では、立ち寄れるおすすめスポットもあります。ひがし茶屋から「鶯谷」を分け入り、卯辰山工芸工房の方へ歩を進めると、山ろくの傾斜地から金沢を一望できる体験型アートカフェ「金沢茶寮」も最近できました。

石川を拠点に世界で活躍する陶芸作家・吉岡正義さんと、その弟子の漆芸作家・松浦悠子さんが、東京の企画・運営会社といっちょに立ち上げた体験型アートカフェ。器の塗りや削り、オリジナルブレンド日本茶「shu ha ri」の喫茶を楽しめる場所です。

金沢茶寮周辺image by:坂本正敬

製作体験については完全予約制ですが、2階のカフェでは金沢のまちを一望しながら、日本茶のラテやブレンド緑茶、チョコを使った日本茶スイーツを楽しめます。

金沢茶寮image by:坂本正敬

ちょうどひがし茶屋街をスタートして、同エリアを散策し、戻ってくる際の折り返し地点の高台に金沢茶寮が立地しています。

高低差を歩き疲れた体を癒しながら、歩いてきた道のりと金沢の眺望を楽しむ時間は、格別です。昭和レトロな民家をリノベーションした建物の外からは、ウグイスのさえずりが聞こえます。

image by:坂本正敬

金沢茶寮で一服したら、来た道を引き返してもいいですし、意図して異なる道を選んでも楽しいはず。

詳しい道が分からなくても、とりあえず坂道を下っていけば、そのうち国道359号線(北陸道)に突き当たります。北陸道に出たら、ひがし茶屋街の方へ迎えば、人通りが戻ってきます。

ひがし茶屋街から卯辰山山ろくを散策して、金沢茶寮に立ち寄り、戻ってくるまでで往復約2時間といった感じでしょうか。

1泊2日の人生初の金沢旅行に無理やり組み込むとなるとちょっと大変かもしれませんが、2泊3日、あるいは金沢が2回目といった人は、ぜひ散策ルートとして楽しんでみてくださいね。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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