江戸時代の風情を堪能。千葉県「小江戸さわら舟めぐり」

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2023/09/27

東京ディズニーリゾートや成田空港といった、県外からも多くの人が集まる場所が多い「千葉県」。

現在は東京までアクセス抜群のベッドタウンとして、築年数の浅いキレイな物件が多く立ち並ぶ新興タウンというイメージが大きく、古くからの文化が薄れつつある印象を受けます。

しかし実は、今でも古き良き風景を感じられる、風情あるまちが残されているのをご存じでしょうか。

そこで今回は、関東県内で日本らしさを存分に味わえる、千葉県・香取市の「小江戸さわら舟めぐり」をご紹介します。

古き良き風景が残る「千葉県香取市」ってどんなところ?

image by:石黒まり花

東京都心からの電車で2時間ほどの場所に位置する香取市。千葉県の北東の街で、茨城県との県境にあります。のんびりと穏やかで緑の豊かな街の中で、緑と水に恵まれた美しい地域が「佐原(さわら)」です。

利根川が流れ込む香取市は、この佐原を中心に水郷三都に数えられます。水郷とは川の周辺にできた村のこと。佐原の水郷は江戸時代、利根川の中継地点としてとても栄えていました。

今のように道路が整備されておらず、乗り物も人力だった時代。船での運搬はとても大切な物資運搬の手段でした。そのため中継地点ともなると人々が集まり、人が集まるから村が発展し、現代までその景色が残されているのです。

「小江戸」と称される佐原の町並み

image by:石黒まり花

関東で初めて重要伝統的建物群保存地区に選出された佐原。佐原を縦断して流れる小野川を中心に広がる古い街並みは「小江戸」と呼ばれ、観光名所になっています。

小野川沿いに広がる歴史ある家々や蔵は、指定文化財として保護されているものも多く、見どころたっぷり。川沿いを散策しながら江戸時代に遡ったかのような気分を味わえます。


川にしなだれかかる柳の木も、風情たっぷりに気分を盛り上げてくれますよ。

立ち並ぶ建物は、江戸時代・明治時代のものが63棟、明治後期の建物が70棟も残されています。全国各地に古い街並みを残した名所がありますが、ここまでの規模で立ち並ぶ景色はそうありません。美しい街並みはドラマや映画のロケ地としてもよく登場しています。

「小江戸さわら舟」に乗船しよう

image by:Walaiporn Paysawat-Mizu/Shutterstock.com

小江戸・佐原に残されているのは江戸時代の街並みだけではありません。かつて江戸へと続く重要な水路であった小野川を、遊覧船で下ることができるんです。

それが「小江戸さわら舟めぐり」。船頭さんの手漕ぎで進む小さな舟に乗り込んで、歩道よりも下の高さから佐原の景観をたのしむことができるアクティビティです。

江戸時代の人々はこの角度から街並みを眺めながら、江戸へと物資を運んでいたのでしょう。数百年も前の人と同じ景色が見られるなんてすごい体験ですよね。

船着場は1ヶ所で、小野川沿いを歩いていると、立派な建物の前にある船着場をすぐに見つけられます。

目印となる家屋は、あの伊能忠敬の旧宅。日本地図を最初に作成した伊能忠敬は佐原地区出身で、この地に30年以上住んでいたのだとか。旧宅は伊能忠敬記念館となっているので、後ほど立ち寄りましょう。


舟からの景色を堪能しよう

image by:photoAC

乗船時間は約30分。事前予約が確実ですが、予約せずとも舟は次々にやってくるので、少ない待ち時間で乗船することができます。

 

その昔、荷物の上げ下ろしをしていたという「だし」と呼ばれる階段を降りた先が乗船場。救命具を身につけ、舟に乗り込んで出発です。

船頭さんの櫂(かい)によってゆっくりと進む舟は風情たっぷり。穏やかに流れる小野川から見上げる佐原の街並みは絶景です。

水面を進むと昔の街並みだけが見え、車の音や人々の話し声などはほとんど聞こえなくなります。現代的なものが見えなくなるので、本当に江戸時代にタイムスリップしたかのよう。水面近くまで垂れ下がる柳の枝も美しく、ゆったりと日本の美を感じることができます。

樋橋から流れる日本の「音」ってなに?

image by:Shutterstock.com

舟が出てすぐの場所にかかる「樋橋(とよはし)」は日本の音風景100選に選出されている橋です。橋であるにも関わらず、「」に注目が集まる理由は、その特徴的な作りにあります。

樋橋はもともと水田へを運ぶための大きな樋(とい)でした。絶えず水が流れるその樋から溢れ出る水が小野川へ流れ込み、その音から「ジャージャー橋」とも呼ばれるようになったそうです。

現代よりも音が少なかったであろう江戸時代、ジャージャー橋の落水の音は「佐原の音」として認識されていたのかもしれません。

300年もの間樋として使われ続け、戦前その上を人が渡るようになり、昭和にはコンクリートの橋となったのだとか。

image by:photoAC

それでも小野川へ水を供給する姿は残され、現在はお昼間の30分に一度ジャージャー橋から小野川へ水が流れ込みます。

農業用の必要不可欠だったものから観光用へと姿を変えながらも、今も同じ場所にある樋橋。歴史を刻む姿をぜひお見逃しなく。

船頭さんのお話に耳を傾けたり、景色を眺めたりしていると30分はあっという間。舟は途中でUターンし、乗船した場所と同じ岸へ戻ります。

舟めぐりの後は小江戸のまちを散策

image by:photoAC

舟を満喫した後は、小江戸の街めぐりを楽しみましょう。街の中には古く美しい景観を保ったままのレストランやカフェのほか、資料館などもあります。

まず訪れたいのが、前述の「伊能忠敬旧宅」と、そこから約50mほど離れた場所にある「伊能忠敬記念館」です。

伊能忠敬は50歳までこの佐原に住み、55歳の時に約3万5,000kmを歩く測量の旅へと出かけました。江戸時代に建てられた住まいが今も残されているなんて驚きですよね。

記念館には測量器具、測量図、日記なども展示されており、この時代に地図を完成させることがどれほどの偉業だったのかを感じることができます。

伊能忠敬旧宅から小野川沿いをすこし下った場所にある「さわら町屋館」にも足を運びましょう。こちらは町家風に作られた休憩所で、中にはカフェや呉服店なども併設されています。

呉服店では着物のレンタルも。着物に身を包み、小江戸の観光を楽しむのも素敵ですよね。2階の広々とした休憩所からは小野川がのぞめます。

現代に残る江戸時代を感じる町

今回は千葉県・香取市佐原の「小江戸さわら舟めぐり」をご紹介しました。

ゆっくりと時間が流れるような佐原。街並みを散歩していても、小野川を舟で旅しても感じられる江戸時代の風情は心を癒やしてくれます。東京からの日帰り旅行にもぴったりな佐原へ、ぜひお出かけしてみましょう。

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元々インドア派だったはずが『恋する惑星』でウォン・カーウァイにハマり、初めての一人旅は上海へ。カメラ片手にどこへでも行くアクティブ旅女子になりました。現在は大学院に通いつつフリーライターとして、旅・アート・美容・ファッションをメインに活動しています。

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