ラーメンとは違う、昔ながらの「中華ソバ」とはなんだろう?
サッポロラーメンの出現で進化したラーメン
まるちゃんマークでおなじみ東洋水産、日清食品とともに国内即席麺市場を二分している食品メーカーである。
そのまるちゃんの袋入り即席麺のシリーズの一つに、もう10年以上発売を続けている生メンタイプ「昔ながらの中華ソバ」がある。メーカーはわからないが、ズバリ「支那ソバ」とネーミングされたものも見たこともある。
これらが全国的に売っているものなのか知らないが、けっこう売り場からなくならないのは、昔ながらの郷愁の味を懐かしむ人々も案外少なくないことも想像される。まるちゃんの場合、”昔ながらの”というフレーズが殺し文句的に効いているのかもしれない。
当節ラーメンもあれでもかこれでもかといろいろとバラエティに富んで来ると、もうたくさんと辟易する向きもあるかもしれない。サッポロラーメン、九州ラーメンをはじめご当地ラーメンが街を席捲、だからこそシンプルで素朴な昔の味がたまらなく恋しくもなろうというものだ。
ラーメンといっても、ほとんど昔ながらの中華ソバもあれば、中華ソバといっても今風のラーメンもあろう。それにしても、あの特有のチリチリのパーマがかかった麺には滅多にお目にかかれなくなった。
人によってはそのチリチリ麺ののびきったのが大好きだなんていう御仁もいた。だいたい出前してきたものは、もうのびが少し始まっているのに、更にしばらくほおっておいて食べている人もいた。
ところで”昔ながらの中華ソバ”には、いろいろ具がゴタゴタ入っていないものだ。その入っている具とは、チャーシュー、ナルト、ゆでたホーレンソーかきざみねぎ、それとゆでたまごの輪切りくらい。これが伝統と調和の具のアンソロジー。スープはもちろん透明な醤油味。
だいたい具やスープにいろいろなものを持ち込んだのは、彼のサッポロラーメンの発明というか功罪だという。
エッセイストの玉村豊男氏によれば、サッポロラーメンの特徴は、スープが濃厚で、スープの味付けの種類が、醤油・塩・味噌・バターなどと選べること。そしてモヤシが具に加わったこと。
このサッポロラーメン以降、なんだそうかそうなのか、ラーメンにはなにをのせてもいいのかという目のうろこかつきものが落ちた感じで、”なーんだなんでものせていいのか”症候群(ナンデモグニナルシンドローム)が全国に広まったという。
サッポロラーメンや九州ラーメン全盛世代に生まれた壮年中年シニアたちは、ずっと昔から味噌味や豚骨味のラーメンがあるかのように思うかもしれないが、戦後も50年~40年くらいの歴史であるわけだ。
ラーメンに対する思いもさまざまだが、なつかしい思い出のラーメンのある光景には、におい・香りも重要な要素だろう。しなびたのれんの古びたカウンターハ-イ…お待ち…と出されたラーメンの湯気の中にに顔を埋める…。
夜、屋台のガス灯のアセチレンとラーメンのにおい。やはりラーメンいうよりその前の中華ソバ・支那ソバの方がピッタリする世界だ。
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