日本人が移民大国「カナダ」で体験したカルチャーショック

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2019/05/29

国内に公式の言語がふたつある

フランス語と英語が並ぶ道路標識 image by:FER737NG/Shutterstock.com

移民も多く、カナダの多文化主義を最も感じられる場所のひとつがケベック州です。ケベック州とはカナダ東部にある巨大な州で、州南部のアメリカとの国境沿いにはモントリオールといった巨大な都市があります。この州の特徴は公式言語が英語ではないという点。

カナダというと、言語は何語だと思いますか?日本人にとっても人気の語学留学先であるカナダなら、当然、英語だと思いますよね。

しかしケベック州に関してはフランス語が公用語で、交通標識はすべてフランス語。公的な文書も、出会う人々の名刺もフランス語で表記され、英語は補足で書かれている感じです。

州都であるケベック・シティ生まれの年配女性に聞くと、その方の両親はフランス語しか話せないと教えてくれました。ケベック・シティでガイド業を営む日本人の方によれば、ケベック州の企業の社内言語はフランス語で、ガイド業務のライセンスもフランス語で試験を受けないと認められないのだとか。

ケベック州の旗 image by:railway fx/Shutterstock.com

どうしてケベック州だけがフランス語を公用語としているのでしょうか。その理由を簡単にいえば、フランス人が長く支配していた土地だから。後にイギリスの支配下に置かれますが、「Je me souviens(私は忘れない)」といった標語の下、市民はいまもフランス文化と言語を大切に守り、今日に至るのです。

もちろんそれだけの土地ですから、独立運動が盛んになった時期もあります。いまでも現地在住の人によれば、有権者の2人に1人は、非現実的な部分を認めつつもカナダからの分離独立を支持しているのだとか。

そんなケベックの歴史的背景もあって、カナダの憲法には公式言語として、

<English and French are the official languages of Canada and have equality of status and equal rights and privileges as to their use in all institutions of the Parliament and government of Canada.>(Government of Canadaの公式ホームページより)

(英語とフランス語は、カナダの公式言語であって、同等の地位および権利、並びに特権を有し、連邦議会、およびカナダ政府における機関全てにおいて使用される)

と、英語と並んでフランス語を認め、同等の地位を与えています


image by:Yeexin Richelle/Shutterstock.com

さらにカナダ政府によれば、移民政策においてはフランス語を話す移住者を優先して受け入れ、「Francophone pathway」というシステムを導入しているといいます。フランス語を話す移住者が、仕事探しや定住をしやすくするようなサポートを行っているのです。

実際にモントリオールで出会ったタクシードライバーはハイチ出身で、フランス語が最初からできるために、移住のチャンスを容易に得られたと教えてくれました。

同じくモントリオールでは、フランス出身で恋人とともに移住してきた30代の男性とも親交を結ぶ機会に恵まれました。その方もやはり、ケベック州では仕事も探しやすかったといいます。

多文化主義を掲げ、ふたつの言語を公式に定めて、フランス語を話す人の移住を積極的にバックアップする国のあり方に、日本人としてちょっと驚かされますね。

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