未完成の美しさ。豊臣秀吉を祀る、広島県・厳島「千畳閣」の魅力
多数飾られた「絵馬」と「しゃもじ」
1,000人の僧侶が読経するお堂になるはずだった千畳閣には履物を脱いで上がります。
未完の建物のなかに足を踏み入れると、天井板が張られていない屋根部分と梁(はり)、柱だけで構成された、シンプルでだだっ広い空間に圧倒されます。
未完の空間なのに、無機的に感じない。
それは無数の絵馬や特大のしゃもじが掛かっているから。
そのなかには厳島神社へ奉納された絵馬もあります。昔は色彩豊かだっただろう絵馬が現代に存在していることを思うと、その果てしない歳月の流れに想いを馳せてしまいます。
巨大なしゃもじも厳島らしさを感じさせるもの。
実は、厳島は木製しゃもじの生産量が日本一という土地柄であることをご存じでしょうか。
しゃもじを産業にした立役者は昔、江戸時代にこの島に暮らした誓真(せいしん)という僧侶でした。やがてしゃもじでご飯をすくい取ることが「勝利をすくい取る」となり、戦勝祈願で奉納されることになったようです。
千畳閣の床下はオトナが通り抜けることができるほどの高さ。
天井を支える支柱、基礎となっている積まれた石などに囲まれて通行すると、 この建物の巨きさを実感するでしょう。
秀吉が他界したことで造営中止となり、連綿と現在にいたる千畳閣。これを未完の美ととるか、戦国時代の遺構ととるか。みなさんの肉眼に委ねます。
- 豊国神社(千畳閣)
- 広島県廿日市市宮島町1-1
- 大人100円/高校生100円/小・中学生50円
- 8:30~16:00
- image by:Phurinee Chinakathum/Shutterstock.com
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