不可能を可能にするんだ。明治の最新技術の結晶、世界遺産「韮山反射炉」

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2020/03/28

最新技術を集めた、革新的な設備

韮山反射炉の外観。image by:梅原慎治
4本の煙突それぞれの下に炉があります。image by:梅原慎治

高温となり熱が均等に伝わる形状として、いまではピザ窯などにも適用されるアーチ型やドーム型の天井を持つ加熱炉。当時は革新的なものであり、まさに最新鋭の設備であったといえるでしょう。

そんな当時の最新設備の姿をいまに残す韮山反射炉は、十字形を配した鉄枠に囲まれた煙突が印象的ですが、この鉄枠は1957(昭和32)年の補修工事までは無かったもので、竣工当時は耐火煉瓦の周囲を漆喰で塗り固めた白亜の塔だったそうです。

上に行くにしたがって細くなっていることも印象的な煙突ですが、これは耐火煉瓦の厚みの違いから成るものであり、煙突内の煙道の太さは下から上まで同じなのだとか。

遠巻きに見た反射炉の様子。2機づつの炉が90度に配置されていますね。image by:梅原慎治

また韮山反射炉は4つの炉があるのですが、この4つの炉は直線上に並べられておらず、2炉づつ直角に配置するという不思議な造りになっています。

これは18ポンドという大きな大砲を作るためには大量の鉄を溶かす必要があり、1つの炉で一度に溶かすことができる鉄の量ではとても足らなかったからなのだとか。

金属は異なる条件で溶け固まると性状にムラができるため、一度に溶かして型に流し込む必要があります。そうしたときに炉が一直線上に並べられていると、炉から型までの距離の差が大きくなってしまいます。

このため2炉づつの炉を直角に配置し、2つの炉の中心同士を合わせた位置に型を配置することで、すべての炉から型までの距離を均等にできたのです。

当時の様子を再現したCGです。image by:梅原慎治
運が良ければ右奥あたりに富士山が見えたはず…。image by:梅原慎治
訪れた日は2月だったため「吊るし雛」の展示も。image by:梅原慎治


このような驚きの技術が詰まった韮山反射炉ですが、当時は大砲製造の中枢を担っていたことから、その周囲に大砲製造の工場が建てられていました。

河津桜と韮山反射炉。image by:梅原慎治

しかし現在はそのような建物がなく、梅や河津桜が咲く風情ある庭園が広がっています。また天気の良い日には、茶畑の上の展望デッキから韮山反射炉と富士山という、静岡県が誇るふたつの世界遺産の両方を一度に観ることがでるのも魅力ですね。

暖かくなるこれからの季節、韮山反射炉に足を運び、日本のものづくりの原点に触れてみてはいかがでしょうか。

  • 国指定史跡韮山反射炉
  • 静岡県伊豆の国市中268
  • 055-949-3450 (ガイダンスセンター)
  • 入館料:個人一般500円、生徒・児童50円
  • 観覧できない日:毎月第3水曜日(詳細はHPをご確認ください)
  • 4月1日〜9月30日午前9時から午後5時/10月1日から翌年3月31日午前9時から午後4時30分
  • 韮山反射炉-伊豆の国市
  • 現在、韮山反射炉ガイド及び市内の文化財ガイドを2020年3月31日(火)まで休止しています。また休止期間は延長する可能性があります。
  • image by:梅原慎治
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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埼玉県生まれ、都内在住のツーリングライター。主に関東近郊を走り周り、美味しい物や良い景色などを見つけて楽しんでいる。

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