京丹波町が“蹴鞠の里”に!?KEMARI文化を未来へつなぐ鞠師夫婦を訪ねて

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2020/10/26

忍耐力が試される!?手仕事本位の鞠づくり

ご覧の通り、蹴鞠の鞠は一般的なものとは違う、独特の形状をしています。まるでマカロンを膨らませたようなフォルムですね。

両側の膨らみは別々にカットした2枚の革でできており、くびれたところに接続用の腰皮が通してあります。その中に殻付きの大麦をぎっしり詰めて“形状記憶”させ、大麦を抜き取るとふっくらとした丸みを帯びた鞠の形に。仕上げに鉛白や卵白などを塗り重ねればできあがり!

……となるわけですが、この流れで1個つくるのに1カ月以上もかかるのだそう。鹿皮の加工期間も合わせると、2カ月以上を要する大仕事です。

今回特別に工房の中にお邪魔して、工程の一部を見せていただきました。

工房の一角には鹿革鞠の材料となる被毛付きの鹿皮がずらり!1頭分でも十分な量に見えますが、使えるのは柔らかなお腹の皮のみ。そのため、1頭につき1個の鞠しかつくることができません。残った皮は鹿革鞠を模したストラップや名刺入れなどに活用しています。

これが游達さんが試行錯誤の末にたどり着いた半鞣の工程。厚みの違いを確かめながら柔らかさが均一になるよう丹念に揉みほぐします。これだけでなんと約10日間もかかるという根気のいる仕事です。

革から鞠をつくる最初のステップは、製図と目打ち。鞠革(*)の上に図面を描き、ベルト状の腰皮で括るための穴を開けていきます。使用する鑿は市販品にアレンジを施した游達さんのオリジナル。さすがは元大工さん!

*鞠革(まりがわ):半鞣の鹿革のこと。游達さんの造語

こちらは2枚の鞠革をドッキングさせる括りの工程。体表面を内側にし、前工程で開けた穴に雄鹿の背皮でつくった腰皮を二重に通します。糸や接着剤などは使わずに、鹿革(皮)100%を貫きます!


殻付きの大麦をぎっしり詰めて整形する穀詰(こくつめ)の工程は、叩く・詰めるをひたすら繰り返す地道な作業。工具でトントンと突きながら粒の隙間をなくし、最後は一粒ずつ手詰めで微調整をします。

大麦を詰めた状態で1週間程度置き、表面の布海苔洗いや乾燥などを経て穀抜きの工程へ。游達さんいわく「ゴールが見えてくる、一番ワクワクする作業」です。

中に詰めた大麦を抜くだけの比較的簡単な作業ではあるものの、一粒残らず取り出すのに2日はかかるそうです。どの工程も一筋縄ではいかないのですね……。

老若男女が楽しめるKEMARIを伝承の足がかりに!

途方もない手間と労力をかけて作り上げる鹿革鞠。一つまた一つと新作が増えるにつれ、游達さんと蒼圭さんに新たな目標が生まれました。 

「游達が復活させた鹿革鞠を後世に伝える『伝承』の取り組みを始めることにしました。鞠づくりのプロセスを映像などに記録すると同時に、みなさんにもっと蹴鞠に親しんでもらえるように生涯スポーツとしてのKEMARIの普及にもチャレンジしているところです」

お二人が提唱する生涯スポーツとしてのKEMARIは、伝統的な作法を基準にしつつも、ひとつの鞠をみんなで一緒に蹴って楽しむ「鞠あそび」。鞠の代わりにカラーボールを使うもよし、室内でプレーするもよし、年齢や性別を問わず誰もが気軽に始められるバリアフリーのスポーツです。

お二人は活動母体の「けまり鞠蹴会(きくゆうかい)」を立ち上げ、昨年度は7カ月にわたって町内の道の駅でKEMARI体験会を実施しました。蹴鞠の成り立ちや鹿革鞠の紹介とともに、鞠の蹴り方・楽しみ方をレクチャーしたところ、「蹴鞠って意外と楽しい!」「年配の私でもこれなら続けられる」といった嬉しい反応が返ってきたそうです。

大きな手応えを感じると同時に、資金確保という継続する上での課題も浮かび上がりました。今後はクラウドファンディングによる支援も活かしながら持続的な活動を展開し、京丹波町から国内外に向けてKEMARIの魅力を発信していく構えです。

そしていつか、京丹波町に「“蹴鞠の里”を象徴する文化施設をつくりたい」と蒼圭さんは夢を語ります。

「ご縁があってここに来て、人の温かさや自然の豊かさに助けられてきました。何か恩返しができるとしたら、やっぱり蹴鞠しかない。日本で培われた蹴鞠の文化や技術をトータルで発信できる場をつくり、まちの新たな魅力を伝えるお手伝いができたら嬉しいですね」

蹴鞠のいちプレイヤーから伝統の鞠づくりを復活させた鞠師へ、さらには温故知新のKEMARIの伝道師として二人三脚の歩みを続ける池田游達さん・蒼圭さん夫妻。お二人の精力的な活動を拝見していると、“蹴鞠の里・京丹波町”の誕生も夢ではない!と思えてきました。

池田さんのもとで蹴鞠やKEMARIを体験し、夢の実現を後押ししてみませんか?

■■INFORMATION■■

けまり鞠遊会(アトリエ蒼天)

住所:京都府船井郡京丹波町上野北垣内13
アクセス:JR胡麻駅よりタクシーで約10分

【体験案内】

「KEMARI」体験

コース1:歴史と鞠装束の体験
蹴鞠の歴史と作法を学び、鞠装束の着装体験も!

コース2:鞠づくりの解説と鞠装束の体験
伝統的製法による鹿革鞠と蹴鞠の関係を詳しく解説

コース3:歴史とけまり体験
蹴鞠の歴史、鹿革鞠について学び、鞠庭で蹴鞠体験!
※雨天時は蹴鞠の歴史とミニ鞠ストラップ作成のワークショップ
※体験のようすはこちらでチェック!

詳しくは、森の京都DMOへお問い合わせください。
TEL:0771-22-9800

  • source:KYOTO SIDE
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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