ほろ酔い旅気分。レトロから最先端まで、全国「かわいいカップ酒」の魅力

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2021/10/22

全国の日本酒が好き。辛口も甘口も大好き

―では、ラベルシールを貼ったカップ酒は手に入れても嬉しくないですか?

浅沼:いいえいいえ、日本酒が好きなので、シールタイプのカップ酒もいただけるのでしたら喜んで受け取ります(笑)。

―ああ、日本酒そのものがお好きなのですね。

浅沼:はい。日本酒が大好きなんです。私の故郷は岩手県で、街にいくつも酒蔵がある環境に育ちました。家族や親戚がみんな日本酒に親しんでいて、私も「成人になったら日本酒を飲むのが当たり前」、そういう感覚でした。

―酒どころで暮らしていたのですか。いいですね。地元のお酒で好きな銘柄はありますか。

浅沼:それが……どこのお酒が特においしかったとか、ぜんぜん憶えていなくて(苦笑)。いろんなタイプの日本酒を、それぞれおいしく飲んでいましたね。辛口も甘口も、分け隔てなく好きでした。それは現在も変わっていないです。どの場所の日本酒もおいしくいただいています。

―ということは、集めているカップ酒はどれも実際に飲んでいるのですね。

浅沼:もちろんです。空いたカップだけが手に入った場合を除けば、必ず中身を飲んでいます。

―どういう時間にお飲みになっているのですか?


浅沼:会社から帰ってきた夜と、お休みの日。基本は晩酌です。自分でおつまみをつくって、食べながら飲みながら「このデザイン、ここもかわいいな」「この酒蔵は、この県のあの辺りにあるのか」って新たに発見をしながら、楽しんでいます。

自分でおつまみをつくり、かわいいカップ酒とともに過ごす晩酌タイムがとても好きなのだそう。image by:浅沼シオリ

ご当地カップ酒で「旅気分」が味わえる

―カップ酒を旅先で見つけるケースはありますか。

浅沼:あります。もともと国内旅行が好きで、新型コロナウイルス禍以前は、旅先の酒屋さんをよく訪ねましたよ。あと、意外と穴場なのが旅先のスーパーマーケット。びっくりするほどその土地の日本酒が充実している場合があるんです。

―スーパーマーケットって、けっこう郷土色が出ますよね。

浅沼:そうなんです。カップ酒の楽しさって「ご当地色の豊かさ」かなって思うんです。プリントを見ながら「このゆるキャラ、誰?」「これはなんの祭だろう」「この方言、どういう意味かな」って知りたくなるし、絵柄を眺めているだけで旅行気分にひたれます。

全国のゆるキャラと出会えるのもご当地カップ酒の楽しみ。image by:浅沼シオリ
これぞご当地カップ酒。岡山県・渡辺酒造「嶺乃誉 上撰 桃太郎カップ」。黒のドットで灰色を表現するなど小ワザが効いている。image by:浅沼シオリ

―この桃太郎のカップなんて、まさにそうですね。

浅沼岡山県・渡辺酒造「嶺乃誉 上撰 桃太郎カップ」ですね。懐かしいファンシーグッズのようなイラストが愛おしいです。あと、黒のドットでグレーに見える工夫をしているなど「印刷好き」から見ても注目すべき点が多いです。

―岡山といえば桃太郎ですもんね。カップ酒って旅情があるんですね。

浅沼:ありますね。旅先で買ったワンカップを自宅へ戻って「荷物、重かったな~」とか思いだしながら、しみじみ飲んだ日もありました。旅の記憶をたどりながら「自宅で飲み鉄」できるのがカップ酒のいいところです。

―「自宅で飲み鉄」!キャッチフレーズにできそう。

浅沼:飲み鉄といえば、ちょっと変わったパターンもあるんです。これは青森県のワンカップなんですが、手に入れた場所は実は東京駅。実家の岩手へ帰る新幹線に乗る前に見つけました。

「こけし」と「りんご」が郷愁を誘う青森・六花酒造「じょっぱりカップ」。image by:浅沼シオリ

―旅へ出る前に旅情の先取りですね。特急の発着駅は、いいワンカップが手に入る狙い目なのかもしれませんね。

浅沼:それはありますね。

駅でご当地カップ酒を購入できるチャンスが多く、それに伴い鉄道デザインも多彩。※「銀盤」のみシールラベル image by:浅沼シオリ

ご縁があって出会えたカップ酒が好き

―コレクションはすべてお一人で集めているのですか。

浅沼:はじめはそうだったんです。けれども私がカップを集めていると知って、この頃は友だちや会社の人が出張や旅行のお土産にカップ酒をくれるんです。これはそのうちのひとつ。東武鉄道で入手できるSL大樹のカップなんですが、金の印刷ってすごく珍しくって。日本各地のカップがこうして集まってきて、「カップ酒が好きだって公言してよかったな」と思いましたね。

栃木県日光市・渡邊佐平商店「清開・特別純米酒・SL大樹カップ」。ゴールドのインクを使い、蒸気機関車の勇壮な姿を表現している。image by:吉村智樹

―インターネットで購入はしないのですか。

浅沼:しないですね。フリマアプリやネットオークションなどは、ぜんぜん見ないんです。旅先や散歩の途中で見つけたり、いただいたお土産だったり、ご縁があって私のもとに自然と集まってきたカップ酒が好き。「うちに来てくれたんだ。ありがとう」って思えますし。

―なるほど。カップ酒そのものが旅をしながら集まってくる感じが好きなんですね。

浅沼:そうなんです。

浅沼さんは縁あって自分のもとへやってきたご当地カップ酒が好きなのだそう。image by:浅沼シオリ

自分で「かわいいポイント」を見つける楽しみ

―「かわいいカップ」「かわいくないカップ」の線ってあるんですか。

浅沼:集めはじめた頃は「誰が見てもかわいい」ド直球のカップにばかり目がいっていました。けれども、だんだん自分で「かわいいポイント」を見つけるのが楽しくなってきて。いまでは、かわいくないカップってないですね。どこかしら、かわいい。

―荒々しいタッチのカップなどは「かわいい」とは言い難い気がするのですが。

浅沼:そんなことはないですよ。たとえばこの新潟県・お福酒造「オフクカップ やまこしの郷」。「牛の角突き」っていう地元の闘牛と鯉、どちらも発祥の地だから並んでいるんですが、なかなか人生で「牛と鯉を組み合わせることってないな」って感心しちゃって。思いつかないですよ。意外性があってかわいい。自分が考えつかないものがデザインされているのもカップ酒の楽しみですね。

浅沼さんが「とにかくかわいい」と絶賛する新潟県・お福酒造「オフクカップ やまこしの郷」。恋とマシンガンならぬ鯉と闘牛が並ぶ衝撃のデザイン。image by:吉村智樹

―これ……かわいいですか?

浅沼:かわいいですよ~。かわいくないですか?錦鯉の柄が一匹一匹違っていて、鯉への愛を感じます。デザイナーに感情移入してしまうんです。

―ご自身がデザイナーだから、愛でるポイントも違うのかもしれませんね。

浅沼:「デザインの勉強」という視点は確かにありますね。「よくこんなに少ない色数でかわいくできたな」「こんなに細かいデザインなのにつぶれない印刷技術がすごいな」とか。シルエットだけでなんなのかをわからせたり、白抜きで表現していたりする部分など、感動します。

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