国技を知れば「北京2022オリンピック競技大会」のメダル予測もできるかも?
ノルディックスキーとアルペンスキー
スキーはしますか?関東で生まれ育った筆者はほとんどしませんが、雪国の北陸に引っ越したいまは、スキー場の近さ・地元の人たちのスキー技術の巧みさに驚かされています。
スキーに対する親近感は、どこで生まれ育ったかがやはり大きな影響を与えそうですよね。
そう考えると、スキーを国技とする国は当然雪国になるはずです。今回も競技にも入っているノルディックスキーとアルペンスキーをそれぞれ国技にする国も雪国です。どこだと思いますか?
ノルディックスキーに関していえば、ノルウェーが国技としています。スカンディナビア半島の西側、フィヨルドの入り組んだ海岸線が世界地図でも確認できる北欧の国ですね。
とはいえ、ノルディックスキーとはどういう競技なのでしょうか。荻原健司さん・荻原次晴さんなどが過去のメダリストとして有名なので、なんとなく競技としての映像は思い浮かぶはずです。
しかし、その内容を正確に理解するためには、今大会でも同じく正式種目に入っているアルペンスキーとの対比で考えるといいかもしれません。
「ノルディック」とは「Nordic」で「アルペン」は「Alpine」です。「Nordic」の意味は「北方人種の、北欧人の」といった感じです。「Alpine」の意味は「アルプス山脈の」といった感じ。
北欧スタイルのスキーが文字通りノルディックスキーで、アルプス山脈の斜面で親しまれるスタイルのスキーがアルペンスキーです。要するに、両方を対比させて理解すればいいのですね。
<ノルウェー,スウェーデン,フィンランドなど北ヨーロッパ諸国で発達した競技を,アルペンスキーと対比して呼ぶ>(『ブリタニカ国際大百科事典』より引用)
ノルディックスキーとアルペンスキーの違いは?
北欧スタイルのスキーとアルプス山脈周辺で発展したスキーは何が違うのでしょうか?最大の違いは滑るコースです。
アルプス山脈のように急こう配で険しい山が北欧にはないとされています(スカンディナビア山脈がある気もするのですが)。同じ北欧でもフィンランドの国土は特に平坦ですよね。
そうなると、比較的傾斜の穏やかながらアップダウンのある山野を滑って移動するスタイルが北欧では主流になります。この山野をスキー板で走破する競技をノルディックスキーと呼ぶのですね。
そのノルディックスキーはさらに細分化もできます。丘陵地帯を滑って移動するクロスカントリーがあって、山野の起伏を利用したジャンプがあり、クロスカントリーとジャンプを組み合わせたノルディック複合があります。要は、これらの総称をノルディックスキーと呼ぶのですね。
ちなみに、スキー板をはいて山野を走破するノルディックスキーの一部に、どうしてジャンプが含まれるのでしょうか。
起伏が少ない北欧の森をスキーで走破する競技と、ジャンブ台まで作ってジャンプする競技は、少し別物の気もするのですが、どうなのでしょう。
この点について、オスロ―にあるノルウェースキー連盟の広報担当者にメールで問い合わせてみたところ、
「I’m in the Olympics and do not read this email.」(オリンピックに行っているからこのメールは読めません)
との自動返信メールが返ってきました。開会式当日にメールを送ったので、担当者が本国に不在だったわけです。「こっちに連絡ください」とのメールアドレスが書いてあったので連絡し直してみました。
残念ながら回答が間に合わずコメントを紹介できないのですが、スキージャンプの歴史そのものがノルウェーで1808年に始まるといった情報も、今大会の公式ホームページに書かれています。
Ole Ryeさんというノルウェー人が小さな丘からジャンプして9.5m飛んだ出来事から全てが始まるそう。クロスカントリー・ジャンプの両方がノルディックスキーの本質であり、ノルウェーでは実質国技になっているのかもしれませんね。
一方で、アルペンスキーを国技とするのがオーストリアです。オーストリアのイメージといえば、音楽の都・ウイーンが印象として強いと思います。しかし、そのウィーンを含む平野部は国土のほんの一部。
地図帳があれば見てください。大げさにいえば、同国は山ばかりです。国土の約6割が現実に山岳地帯で、そのうち国土の西部にアルプス山脈が広がっています
しかも、アルプス山脈の一角にあるアールベルク地方は、アルペンスキー発祥の地ともいわれています。
<ザンクト・アントン、ザンクト・クリストフ、チュルス、レヒを含むアールベルク地方は「白銀のリング」とよばれ、スキーの国際的中心地である。>(小学館『日本大百科全書』より引用)
スピードスケートにしろ、ノルディックスキーにしろ、アルペンスキーにしろ、各競技の発祥の地では、その競技が国技とされる傾向があると分かってきました。
この周辺では険しい斜面を滑り下るので、スキー板とブーツがしっかり固定されています。日本人にとってなじみ深いスキーのスタイルは、アルペンスキーのイメージではないでしょうか。
ノルディックスキーの場合は、なだらかな丘陵地を歩くように移動するため、スキー板とブーツはつま先だけが固定されています。歩行のたびにかかとが上がるようになっているのですね。
この辺りの違いに目を向けると、今回に限らず今後の冬季五輪も含めて冬の競技観戦が余計に楽しくなるかもしれませんね。