トンネルを抜けると別天地…天王山の南麓にある美しい洋館「アサヒグループ大山崎山荘美術館」
所蔵品だけでなく建物も見どころ
アサヒグループ大山崎美術館は、国の登録有形文化財に指定されている建物自体も見どころです。細部にわたり意匠が凝らされ、加賀氏のこだわりや審美眼が随所に感じられます。例えば、こちらの居間にある暖炉は……。
よく見ると、石に浮彫や線刻で画像が掘ってあるんです。これは古代中国のお墓の装飾に使われていたという「画像石(がぞうせき)」と脇脚部分の「画像磚(がぞうせん)」。このような素晴らしい美術品を暖炉の装飾に使うとは、加賀氏の趣味の広さを感じさせます。
そして見上げれば壁の上部に、先ほどの画像石の複製がぐるりとはめられています。なんという贅沢!
さらに天井との境部分にはタケノコの彫刻が巡らされていました。さすが「竹の里・乙訓」(左上)。
シャンデリアには素晴らしい彫刻がほどこされていますし(右上)、暖炉前のガードはかわいらしいリスがモチーフ(左下)。加賀氏はこの部屋を船に見立てたともいわれ、壁には実物の魚網が塗り込められています(右下)。
居間の隣は応接間。加賀氏が住んだ当時は植物が置かれ、サンルームとしても使われていたそうです。白い床と石の壁は龍山石、床や窓下には大理石が使われ、まるでヨーロッパのお城のようです。
この部屋には、「パルミラ饗宴図浮彫」(制作時期2~3世紀)が常設されています。かつてシルクロードの西の中継地として栄えたオアシス都市・パルミラの墓所を飾った浮彫の一部で、彫刻に彫られた人物の服装や持物から、当時の人々の豊かな暮らしぶりが窺えます。
応接間へ向かう廊下の壁にはヨーロッパから取り寄せた金が練り込まれたステンドグラスが入れられています。左の部屋の中から見るのと、廊下側から見るのでは色の発色が異なって見えるという非常に手が込んだものです。
2階へ行ってみましょう。飴色に光った階段手すりの曲線も見事。よく見ると木を捻じらせて美しいカーブを描いています。
踊り場にはヨーロッパから取り寄せたという大きなステンドグラスがあり、中央にマリア様が描かれていました。
階段を上がったところは吹き抜けのホールになっています。こちらはパーティ会場としても使われ、時にはダンスも行われたそうです。3階のボックス席では音楽団による演奏も行われていたのだとか。華やかだったんでしょうね。
ホールに面した貴賓室には部屋専用のバスルームもありました。こちらにはトイレ(右)とバスタブ(左)が一緒の部屋にあるのです。今では珍しくありませんが当時は超最先端の仕様。
しかも山荘にはボイラーがあり、シャワーからお湯が出たのだとか!さらにこのボイラーを使い各部屋にヒーターが配されていたそうです。