沖縄の旅が変わる。4日間もかけて「伝統工芸」体験をさせる、その本当の目的は?

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2024/02/24

沖縄にある伝統工芸「首里織」と「琉球びんがた」。実は沖縄は「工芸の島」とも言われ、国の伝統的工芸品に指定されている16品目のうち、13品目が染め・織りです。

琉球王国の時代からの伝統、首里織 image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

琉球王国の時代から受け継がれてきた首里織、そして、琉球生まれで唯一の染め物である色鮮やかな琉球びんがた。これらを発信する新たな拠点「首里染織館suikara」が2022年4月30日、沖縄県那覇市首里の地にオープンしました。

この施設では、首里織と琉球びんがたの展示や販売、誰でも参加できる体験プログラムもあります。今回、14~15世紀にさかのぼる琉球王国からの伝統工芸とその体験内容、さらに今、沖縄県が力を入れて取り組む旅のスタイル「エシカルトラベル」などもご紹介します。

琉球王国から戦火を乗り越えて受け継がれてきた伝統工芸

首里織の作業を見学、体験できる image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

首里織」は、琉球王国の時代、東南アジアや中国、日本との交易で習得した織りの技術が取り入れられ、琉球の気候風土に合わせてさまざまな織物へと進化しました。

とりわけ、王都・首里では、王族や貴族らが身に着ける、格調高くて麗美な織物の技法が多く伝わり、これらを総称して「首里織」と呼ばれています。

特に、数多くある首里織の中で、王族のみが着た「花倉織」、王族や貴族が着用した「道屯織」は、首里のみで織られた特別な技法でした。現在では、帯や着尺などの和装用の反物、小物やインテリアなどに使われることも。

琉球びんがたも沖縄ならではの伝統工芸 image by:首里染織館suikara

一方、「琉球びんがた」は、南国らしい色彩が特徴的。多色使いは紅型(びんがた)、藍の濃淡で染めるのは藍型(イェーガタ)と呼ばれます。

沖縄で目にする踊り衣裳の紅型は、もとは王族や貴族が着ていた柄。特に、大柄の紅型は大変な手間と高度な技術を要するため、当時も今も高級品とのこと。この琉球びんがたも現在では、日常使いの品々、若手のアート作品など幅広いジャンルですそ野を広げています。

首里城のおひざ元にオープン。生産者と交流できるのが貴重な理由

首里織と琉球びんがたの情報発信拠点。首里城から徒歩7分 image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

首里染織館suikara」は、那覇空港から沖縄都市モノレール(ゆいレール)に乗り、首里駅から徒歩約5分。首里城へ向かう道中に位置しています。


1階に展示ギャラリーと情報発信スペース、2階に琉球びんがたの組合、3階に首里織の組合による工房が設けられています。

後継者育成の場でもあり、外から作業風景の見学が可能。首里織や琉球びんがたを使ったオリジナルグッズなどの販売ショップも、1階にあります。

首里織は色鮮やかな糸が特徴の1つ image by:首里染織館suikara

実はこれまで、琉球びんがたや首里織を含む染織物は、生産者から購入者の手に渡るまで、呉服問屋や小売業者など流通経路が複雑で、旅行者はもちろん地元の人々にとっても、生産者と交流できる場所は限られていました。その意味でも、この施設のオープンはある意味、画期的なのです。

伝統の琉球びんがた染めをトートバッグで挑戦

琉球びんがた染め体験プログラムの様子 image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

琉球びんがた染めの体験プログラムでは、オリジナル柄のびんがたをトートバッグ(大・中・小)で染めることができます。デザインはトートバッグ(大)の場合、「流水花とオオゴマダラ」「守礼門」などから1つ選びます。

トートバッグ(大)に色を差していく作業 image by:シカマアキ

トートバッグは、型紙を置き、防染糊を塗って乾燥させた状態で受け取ります。そして、見本を参考に、赤や青、黄といった色を差していきます。見本通りの色にしても、また見本と異なる自分好みの色を選ぶことも可能です。

簡単なようで、色をしっかり一度、二度と差していく工程は、なかなか集中力が要ります。色差しが終わったら、次は暗い色で陰影をつけ、柄に立体感を出す隈取りという工程。

色に迷ったり、色が少しはみ出てしまったり、迷うことなどがあればすぐ相談できる講師がそばにいて丁寧に指導してくれます。

トートバッグ(大)完成後。柄は4種類 image by:首里染織館suikara

色差しと隈取りが終わった段階で、ここでの体験は終了。その後は自宅などに持ち帰り、3日後に色が定着してから、糊を洗い流して乾燥する作業を行います。

これも5~6時間ほどかかるものの、最後に乾かしてドライアイロンをかけると、色鮮やかな琉球びんがたのトートバッグがついに完成です。


4日間かけて作り上げる本格体験プログラムも用意

首里織の体験場所。講師が指導で付く image by:シカマアキ

ほかに、首里織の体験プログラム(有料)もあります。幅36cm×長さ約10cmの絹糸の花織を、約1時間で織っていきます。講師がそばに付くので初めてでも安心。手と足を使い、投げ杼での本格的な機織りが楽しめます。

さらに、4日間かけ、琉球びんがたと首里織のそれぞれを行う本格体験プログラム(有料)も用意。体験料金は決して安くないものの、琉球文化とじっくり向き合い、ものづくりに没頭しつつ、沖縄に流れるのんびりとした時間を過ごすのは、人生において貴重な経験となるはず。ある意味、大人向けの沖縄旅行です。

1階展示ギャラリー。琉球びんがたと首里織の作品が並ぶ  image by:シカマアキ

1階の展示ギャラリーは、誰でも気軽に見学できる場所。琉球びんがたと首里織、両組合員による最新作の帯や着尺などが並び、色鮮やかな作品がじっくり見られます。情報発信スペースでは、伝統的な手作業を継承する沖縄の染め織りの魅力を伝えています。

「首里染織館suikara」がある場所は、首里城のおひざ元。2026年には首里城正殿の復元、さらに、中城御殿や松崎馬場などの整備も予定されています。首里エリアは今後さらに、街歩きが楽しいスポットになりそうです。

  • 首里染織館suikara
  • 沖縄県那覇市首里当蔵町2-16
  • 098-917-6030
  • 入場料:無料
  • 琉球びんがた染め体験プログラム:3,520円(小)4,290円(中)4,950円(大) ※事前予約推奨(当時空きあれば受付可能)
  • 休館日:火曜/年末年始/ウークイ(旧盆最終日)
  • 10:30~18:00
  • ホームページ

沖縄が世界に発信する「エシカル」な旅とその意義とは

クッションのカバーなど首里織は今では幅広く使われている image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

沖縄は国内で最も人気が高い旅行先。日本各地そして海外からも、年間多くの旅行者が訪れます。

一方で、長年続く沖縄ならではの歴史や文化、旅行客が置いていったゴミなどの環境問題などはなかなか注目されない現実があります。

そこで地域住民、環境、社会に配慮したやさしい旅「エシカルトラベルオキナワ」が、沖縄県と沖縄観光コンベンションビューローで進められています。

旅行者が、旅行前(タビマエ)/旅の途中(タビナカ)/旅行後(タビアト)でずっと沖縄旅行を楽しめるような、県内での飲食店や宿泊施設、観光施設などを紹介しています。例えば、沖縄で三線体験、軽石でピザ作り、EVバスで巡るネイチャーツアー、モダンな琉球ガラスなど。

今、世界中の観光地で、「サステナブルツーリズム」が注目されています。旅行者が集中する負の影響、その要因を背景とし、訪問客や受け入れ地域の需要などに適合しつつ、現在と未来の環境や社会文化などに十分配慮した観光のこと。

エシカルとは、人や社会、地域、環境などによいものを選ぶ消費行動やライフスタイルとの意味で、目指す方向はサステナブルと同じです。

首里染織館で見られる首里織や琉球びんがたの作品 image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB

沖縄で、ちょっと一歩踏み込んだ体験をする新たな旅スタイル。もう何度も沖縄を訪れているリピーターにも、ぜひおすすめです。旅行前から旅行後まで、より充実した、楽しい旅の思い出となるでしょう。

エシカルトラベルオキナワ(おきなわ物語)

  • 取材協力:ソラシドエア、沖縄県・沖縄観光コンベンションビューロー
  • image by:沖縄観光コンベンションビューロー(C)OCVB
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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ジャーナリスト・フォトグラファー。飛行機・空港、旅行、ホテル、グルメなどをメインに、国内外で取材、撮影などを行う。雑誌やWEB向けの記事、写真や旅行などのセミナー講師も務める。元全国紙記者。大阪在住。

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