コシとは無縁、でも美味しい。三重県伊勢市の名物「伊勢うどん」
すると運ばれてきたのがこちらの定食。
うどんに揚げ物+ご飯+お新香が付いて750円。 お得感満点です。
初めて体験する伊勢うどんはダシが少なめではあるものの黒々としていて、いかにも塩カラそ〜。食べると、唇の端がヒリヒリしないかしら?
しかし、それは杞憂でございました。この濃い色はたまり醤油がベースになっているからで、実際は鰹節や昆布、煮干しからとった出汁が加わり、まろやかな甘辛味。絡めながら食べるのが特徴です。そして太めの麺。ストロングな食感を連想させておきながらホワホワとやわらかく、風邪を引いた時に食べたくなるような慈しみを感じてしまいました。
というわけで、見た目とはウラハラな優しいお味にビックリ。讃岐うどんのようなシコシコ、モッチリな食感がうどんの醍醐味だと思っていると肩すかしをくらうほど箸で難なく切れるソフトな麺ですが、「伊勢うどん」といううどんの1ジャンルを確立しています。
そして備えつけの天かすをかけると、ダシを吸った天かすが麺とネギと絡まって、コックリとした旨味を添える良い仕事ぶり。
ん〜、グッジョブ!今でこそ、伊勢うどんには肉や月見、天ぷらうなどの具のバリエーションがあるものの、古くはネギのみだったそう。
お客様が途切れないお店の厨房で忙しく立ち働いてらっしゃる、ちとせのご主人に少しだけお話をうかがうと
「ダシは大正時代から伝わる材料と作り方を踏襲しているんですよ。うどんの麺は昔、店で打っていましたが、今は専門の方に委託して作っていただいています。美味しいと言われると嬉しいですね〜。ありがとうございます」。
さて、伊勢うどんは400年以上の歴史を持ち、この地に暮らす農民が家庭で作った味噌のうわずみを麺(うどん)にかけて食したのが始まりだとか。極太の麺は「お伊勢参り」で伊勢神宮を訪れる参拝者にすぐに提供できるよう、茹で時間をあまり気にしなくてよい太い麺が適していたからと言われています。
また一説には、やわらかな太麺は、お伊勢参りで日本各地から長旅をしてきた人の体調を考慮し、消化を助けるためとも。
帰京すると、偶然にも友人の1人が伊勢を旅した際、ちとせに行ったことが判明。
「期待しないで伊勢うどんを食べたけど、美味しかったよね。あそこのうどんは毎日でも食べたいぐらい」と絶賛。
かつて讃岐うどんが世を席捲したように、伊勢うどんもブームにならないでしょうかね。
ちとせ
三重県伊勢市岩渕1-15-11
Tel: 0596-28-3879
営業時間:11時〜17時
- image by:御田けいこ
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