国内で1カ所だけ。縄文人も愛した翡翠を拾える富山「ヒスイ海岸」

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2018/11/24

海辺の散歩は、どこかロマンティックですよね。1人で歩いても自分を見つめ直すいい時間になりますし、大切な人と一緒に歩けば、お互いの関係は深まる気がします。そんな海辺の散歩中に、ヒスイが拾えるとしたらどうでしょう。

そこで今回は日本で唯一、ヒスイの原石が拾える海岸、富山県のヒスイ海岸を紹介します。日本の渚百選にも入る海岸沿いには2018年10月20日、『ヒスイテラス』という交流施設もできて、ますます楽しみやすくなっています。北陸に秋晴れが続く今だからこそチェックしてみてください。

ヒスイ原産地が国内で発見されたのはわずか80年前!?

4kmにわたって美しい海岸が続く 筆者撮影

日本海に面した富山県の北部は、富山湾を抱きかかえるようにして、東西に陸地が続いています。その最東端、新潟との県境を共にする朝日町にヒスイ海岸(正式には宮崎・境海岸)が4kmにわたって続いています。白砂のビーチではなく角の取れた小石でできた砂利浜ですが、その砂利の中にヒスイの原石が混じっているのです。

ヒスイとは、縄文時代の人が勾玉(まがたま)作りなどに利用した美しい石になります。「翡翠」と漢字で書き、「翡翠」の「翡」はカワセミの雄、「翠」はカワセミの雌を意味し、あの美しい青緑色の野鳥と似たような色の石を、ヒスイと呼ぶようになったのだとか。

富山県埋蔵文化財センターが作成した『ひすい −地中からのメッセージ−』という小冊子があります。その中にはヒスイが出土した縄文時代・弥生時代・古墳時代の遺跡の分布図が掲載されており、海沿い、大河沿いの至る所でヒスイが出土している様子が分かります。

こうなると、ヒスイは古くから日本で産出し、多くの人々に親しまれてきたと思ってしまいますが、実はヒスイの産地が国内にあると発見された時期は、今からわずか80年前の話なのだとか。それまではミャンマー産(ビルマ)のヒスイが日本に伝わり、国内に流通しているなどと考えられていたみたいですね。

ヒスイ海岸はヒスイの原産地・姫川渓谷から目と鼻の先

海岸に面してオープンしたヒスイテラスの屋上 筆者撮影

では、80年前に日本のどこにヒスイの産地があると、発見されたのでしょうか。藤田富士夫著『玉とヒスイ−環日本海の交流をめぐって』(同朋舎出版)にその経緯が詳しく書かれています。今回の舞台であるヒスイ海岸のすぐ近く、県境をまたいで隣り合う新潟県糸魚川市の渓谷で見つかったのですね。

発見者は歌人や評論家として活躍した人。高志の国(現在の富山周辺)の女王がヒスイの首飾りをしているという『古事記』の描写に注目し、北陸に産地があると予想して探索を行いました。その探索によって原産地が新潟県の姫川渓谷、姫川の支流である小滝川にあると特定され、後に岩石鉱物鉱床学の世界で、次いで考古学の世界で知られるようになり、今に至るのだとか。

ヒスイ海岸はその原産地から目と鼻の先の距離。ヒスイの産地から原石が川に流れ出して、海に運ばれヒスイ海岸に漂着すると考えられています。また、立地的に原産地が近いため、海底にヒスイの含まれた地層が分布しているとも考えられるのだとか。


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