いずれなくなる絶景。北海道・野付半島、冬の「氷平線」を歩く
日本にも数々の絶景があり、私たちの創造を超える大自然が創造したたくさんのミラクルと出会うことができます。
その中でも今回紹介するのは、真っ白な世界とその先に浮かぶ“氷平線”が見える場所、北海道の東側に位置する「野付半島」です。
どこまでも続く氷平線が美しい、冬の「野付半島」
知床半島と根室半島の中間に位置する野付半島は、半島と呼ばれてはいますが実際には沿岸流によって運ばれた土砂がたまってできた砂嘴(さし)です。砂嘴と聞いてもいまひとつピンと来ない人も多いかと思いますが、有名な京都の「天の橋立」も砂嘴のひとつで、そう聞くとなんとなくふむふむという気になりますよね。
野付半島の長さはなんと約26kmにもわたり、これは砂嘴としては日本最大規模のもの。面白いのがその形で、地図で見てみるとわかりますが、半島と呼ぶにはあまりにも細く、まるで羽のようにやわらかな曲線を描いて伸びています。
なんともユニークな形を形成し、一番狭い部分の幅はわずか50mほどなので、とにかく細く長くの伸びていることがわかると思います。山らしきものがひとつもないので、道の真ん中に立つと両側に海を見わたすことができます。
四方を海に囲まれたわが国ですが、これはなかなかありそうでお目にかかれないシチュエーション。道の真ん中に立って左右に海を眺めると何ともいえない開放感が漂うのですが、同時にちょっと心もとないような不思議な感覚を覚えます。
ここが“この世の果て”に続く道だとしてもすっと納得してしまうような、そんな感じです。
野付湾を含むこの半島一帯は、独創的な地形が産み出した自然の宝庫です。湿地や干潟、草原や砂地を挟んで海が続き、アマモが繁茂する浅瀬の海は魚類や攻殻類の絶好の棲み家となっています。
そのため、豊潤な水辺は様々な鳥や海獣たちの生息地であり、シカやキツネなど野生動物たちにとっても貴重な餌場なのです。
2005年にラムサール条約にも登録された野付半島と野付湾の湿地は野鳥の楽園でもあり、これまで日本で観察されている野鳥の約40%にあたる240種ほどが観察される場所なんだそう!
この大自然を求めてバードウォッチャーたちはもちろん、夏には多くの人々が自然散策目当てに訪れるネイチャースポットとなっていますが、実は、素晴らしいのは夏だけではありません。冬の野付半島こそ大自然の創り出すミラクルと出会える場所なんです。
毎年冬の間だけ野付半島に現れる特別な風景が野付湾の“氷平線”。水平線を氷という文字に置き換えたこの“氷平線”は、野付半島の内側の海が真冬になると凍り、だいたい1月から3月中旬ごろまで、一面が大きな平原となると現れます。
視界を遮るものはひとつもなく、どこまでも大きく真っ青な空が開け、真っ白な“氷平線”をくっきりと映し出すのですが、その光景は本当に南米ボリビアの絶景「ウユニ湖」を彷彿させるもの。しかも、野付湾は水深がごく浅いので、凍った海の上を歩くことができます。
ただし、通年立ち入り禁止区域もあるのでご注意ください。