海の宝石たちと海中散歩。鮮やかな三重県尾鷲の「人工魚礁」へ
可憐で鮮やかな海の仲間たちがお出迎え
漁礁で最初にダイバーを出迎えてくれるのがキンギョハナダイの群れです。ブロックの柱を覆うソフトコーラルの周りを、まるで、お花畑に舞う蝶のように可愛らしく泳ぎ回ります。
ソフトコーラルとは名前の通り柔らかいサンゴのことで、イソバナ、トゲトサカ、フトヤギ、キサンゴなど、いずれも色鮮やかなものばかりです。まるで植物のように見えますが、トゲトサカやキサンゴは刺胞動物と言う立派な動物の仲間です。
ソフトコーラルではありませんが、ウミシダもこのお花畑の重要なキャストです。その名の通り、まるで植物のシダそっくりですが、ヒトデやウニ、ナマコと同じ棘皮動物の仲間です。姿カタチのバリエーションの広さに驚かされます。
こうした海のお花畑には、さまざまなお客さんが訪れます。細長い体に長いくちばし、派手な格子模様の衣装をまとったクダゴンベは、ダイバーに人気の魚のひとつです。ウミカラマツの枝の間に隠れていることがあります。格子柄がカモフラージュになっていて探すのが一苦労ですね。
漁礁の柱の周りを泳いでいるのは、サクラダイのペア。白い斑点のある方がオスで、背びれに黒い斑点がひとつあるだけある方がメスです。サクラダイは、生まれたときはすべてメスで、成長とともにオスに性転換するものが現れます。
ブロックの重なり合った隙間はウツボにとっては住み心地が良いようで、ウツボ、コケウツボなどをよく見かけます。地味な色合いの多いウツボの仲間ですが、トラウツボは色も容姿も派手好みです。英語名はDragon moray。この名前の方がピッタリはまりそうですね。
半透明のベールのようなヒレを大きく広げて、漁礁の周囲を舞うように、優雅に泳ぎまわっているのはミノカサゴです。「綺麗なものには棘がある」のことわざどおり、美しいヒレには猛毒を持った棘があり、刺されると大変痛みます。
ミノカサゴの縞模様は「私は毒を持っている。触るな」という警戒色ですから、忠告には素直に従っておくのが正解です。
外洋に近い漁礁は、黒潮の流れの変化に敏感に反応して、水温や透明度が変化します。その度に違った表情を見せてくれるのも、漁礁の魅力です。
魚の姿がほとんど見られないときがあるかと思えば、漁礁全体を覆うほどの小魚の大群が押し寄せることもあります。その後を追いかけて、マトウダイやカンパチなどの大型回遊魚がやって来ることもありますよ。