ひがし、にし、主計町。熟練ガイドに聞く、金沢茶屋街の上手な歩き方

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2019/10/05

金沢の茶屋街で注目したい加賀格子「木虫籠(きむすこ)」

ひがし茶屋街 image by:坂本正敬

「ひがし」の見どころとしては、やはり茶屋街のまち割り茶屋街特有の建築様式に注目してほしいと中村さんはいいます。

ひがし茶屋街は、大まかに4本の通りがあり、その最も広いメインストリートには、なかなかの道幅があります。

この通りは江戸時代に桜と柳の街路樹が交互に植えられていたという意外な歴史があるとかで、道に面して向かい合った茶屋街で楽しむお客同士にとって、お互いの目隠しになるようにと植樹がなされていたのだとか。

茶屋街の格子 image by:坂本正敬

窓にはまる格子にも注目です。「木虫籠(きむすこ)」と呼ばれる金沢の加賀格子は、桟(さん。縦向きに並んだ台形の木材)の幅が狭く、外から中ではなく中から外が見えやすい作りになっています。

image by:坂本正敬

その理由に関しては諸説あるようですので、金沢ボランティアガイド「まいどさん」を頼んで、ガイドの方に直接聞いてみると、ガイドブックには載っていないような話が聞けるかもしれません。建物の細部に宿る歴史を感じながら茶屋街歩いてみると、見え方にも深みが出てくるから面白いです。

往時の茶屋街の人気が伝わる2本の橋とは

浅野川大橋から眺める主計町茶屋街 image by:坂本正敬

浅野川を挟み、ひがし茶屋街の対岸に位置する「主計町(かずえまち)」もユニークです。ひがし茶屋街とともに、主計町茶屋街も過去に大きな火事で一度も焼けていません。

そのため、日清戦争の戦勝記念に植えられた桜の並木も残っていますし、細い道が自然の地形に沿って自由に曲線を描きながら人の往来を許しています。大規模開発と共に直線で構成された新しいまちにはない、趣きと味わいが大いに見てとれる歴史スポットとなっているのですね。

浅野川沿いに広がる主計町茶屋街と戦勝記念で植樹された桜並木 image by:坂本正敬

ガイドの中村さんは、ひがし茶屋街から浅野川大橋を渡り、筆者をその主計町に導いてくれました。道なりに浅野川沿いの茶屋街に入るのかと思ったら、橋を渡ってあえて橋場の交差点まで歩き、尾張町を通って久保市乙剣宮から、河岸段丘と思われる高低差を下って主計町茶屋街に向かいます。

つまり、ぐるりと遠回りして主計茶屋街を目指しました。


くらがり坂と金沢のボランティアガイドの中村信昭さん。文字通り昼間でも木の影で暗い image by:坂本正敬

「どうしてこちらを周るのだろう」と思っていると、その疑問は久保市乙剣宮から主計町茶屋街に通じる「くらがり坂」を見下ろしたときに解決します。

遠回りして歩いた尾張町の周辺(現在の百万石通、国道159号線沿い)はかつて商人が商いを営んでいたエリア。

その裕福な男衆が人目を忍んで文字通り「真っ暗な」くらがり坂を下り、主計町茶屋街に向かったと教えてくれました。言い換えれば、男衆が通ったルートを、実際に歩かせてくれたのですね。

「日本一狭い」公道と言われる主計町茶屋街の路地 image by:坂本正敬

中村さんの説明は、主計町の近くに架かる中の橋、さらにはひがし茶屋街の近くに架かる梅ノ橋にも及びます。

どちらも小ぶりで、戦車も通れるくらい立派な浅野川大橋と比べると違いが目立ちますが、いずれも茶屋街に行きたい男性のために作られた橋だといわれているのだとか。当時の茶屋街は、男性たちに橋を架けさせるほど、魅力があったとも言えます。現代の男子たちも、少し見習いたいくらいの気風かもしれませんね。

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