黒船来航が関係していた?歴史からたどるニッポンの「乾杯」豆知識

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2020/04/04

「カンパイ」の掛け声はどこからやってきた?

image by:TokyoVideoStock / Shutterstock.com

新しい言葉が必要になったとは分かりましたが、「カンパイ」という言葉は、どこから出てきたのでしょうか?

調べた限りでは、主にふたつの説がある様子。ひとつは「平安時代の宮廷儀式書」、もうひとつは「中国で使われている乾杯の言葉」ですね。

『乾杯の文化史』によれば、杯を掲げる際の掛け声が「バンザイ」から「カンパイ」に代わった時代は、日清・日露戦争を終え、極端な西洋文化への熱がひと段落した時期だといいます。

ちょうど、国民という意識が庶民にも芽生え、ナショナリズムが高まってくる時期。

その際に、復古主義として平安時代に成立した宮廷儀式書の「欲献御酒之時、親王進跪唱平、即乾杯、御損訖称」に注目し、みんなが使い始めたと考えられるのだとか。

ただ、この宮廷儀式書にある「乾杯」という言葉は、書き損じであるという指摘もあります。わざわざ意味をなさない誤りの言葉を、万歳の代用として「発見」したとは、ちょっと強弁な感じがしないでもありません。

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一方で、中国で使われている「乾杯(干杯)」の言葉を輸入したという考えもあります。

中国では「gambei」と発音して、「乾杯」、簡体字で「干杯」と書く言葉があります。最初に中国で「乾杯」の言葉が登場する時期は、『続夷堅志』という13世紀の書物だといいます。

日本の乾杯のように、飲み始める前に掛け声のように使う言葉ではなく、文字通り杯を空にする、酒を飲み干すという意味の言葉です。


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北京に暮らす知人の中国人ジャーナリストに聞いてみると、やはり「乾杯(干杯)」はいまでも飲み干すという意味が強いみたいです。

最近では何かを飲む前に「gambei」と声を出すような使われ方もされているといいますが、日本人はこの言葉を輸入したとも考えられるみたいですね。

流れをまとめると、

  1. 幕末に、酒の入った杯を掲げる動作が黒船来航とともにアメリカから入ってきた
  2. 明治時代に、杯を掲げながら「バンザイ」というようになった
  3. 大正時代初期に、「バンザイ」は乱用すべきではないという考えから、「カンパイ」という言葉を使うようになった

という歴史になっているのですね。

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