「お子さまランチ」発祥の地はどこ?意外と知らない身近な食べ物の由来・歴史
「お子様ランチ」は誰が始めた?
続いては「お子様ランチ」です。『広辞苑』(岩波書店)を調べると、
<子供の好む食物を見て楽しいように盛りつけた洋食定食>(『広辞苑』より引用)
とあります。見方を変えれば、『広辞苑』にも掲載されるほど日本人に定着したメニューのひとつ。
しかし考えてみると、このお子様ランチはいつ、どこで生まれたメニューなのか知らないかたも多いはず。諸外国では見かけませんから、少なくとも日本が発祥の料理だとは分かりますが、その細かな歴史はどうなっているのでしょうか。
岡田哲著『たべもの起源事典』(東京堂出版)によると、誕生したのはいまから約90年前の1930(昭和5)年。第2次世界大戦前の話ですね。
東京にある百貨店である日本橋三越の食堂主任だった安藤太郎さんという人が、1枚の絵皿に子どもの大好きな食べ物をまとめて盛りつけるメニュー、いわゆるお子様ランチをつくったところから歴史が始まるそう。
時は1929(昭和4)年に起きた世界大恐慌の直後です。その暗い世相を吹き飛ばしたいと、子どもに夢を与える「御子様洋食」がスタートしたのですね。
当初から、定番のメニューとして
- 富士山型のライス
- 日の丸の旗
はあったようです。さらに
- コロッケ
- ハム
- 果物
を飾ったといいます。ライスに旗を立てるという発想は、それだけで子ども心をとりこにしますよね。
発売当時の値段は30銭。同じ時期にたい焼きが3個で5銭だったといいますから、その計算で行くとたい焼き18個分と同じ値段です。
いまの感覚でいえば、たい焼きは1尾100円、18尾で1,800円ですから、お子様ランチがおおよそ1,800円という値段感覚になります。ちょっと割高な感じがしますよね。
しかし、当時は物珍しさもあって、大いに人気が出たそう。
親子連れで訪れるお客が後を絶たなくなったため、大人向けの場所という印象があったデパートのレストランの印象を、お子様ランチが変えていくきっかけにもなったみたいです。
ほかの百貨店でもまねするお店が続出し、日本中に広まっていったのですね。