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新型コロナで窮地に立つ映画館を、街を支える。京都「出町座のソコ」の挑戦

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2020/05/30

出町座と街の危機を感じて始めた「お取り寄せ」

いつ終わるとも知れぬ危機。このままでは経営が立ちいかない。なにより映画館とカフェと書店が合体した稀有な存在である「出町座」が育んできたミクスチャーな文化が途絶えてしまう。おそれを感じた築地さんが考えたのが、「お取り寄せ」でした。

築地「出町座が忘れられないように、『誰かがこの建物のなかでつねに動いているんだ』と発信していかなければいけない。そのために発想を切り替えました。お客さんに来ていただけない状況ならば、お送りしようかと」

お取り寄せで店を動かせば、売り上げダウンを抑えられる。さらにSNSなどで発信し続けることで、「出町座が歩みを止めていない」と伝えられる。

自宅待機中の、画家でもあるスタッフに商品説明書に添えるイラストを描いてもらうなど、窮状だからこそできる、それぞれ才能を活かす取り組みをしていくことで、お店もブラッシュアップしていける。

そう考えた築地さんは、レトルトパックにした特製スパイスカレーや、砂糖を添加していないドライフルーツティー、蜂蜜漬けのいちじくなど全国へ向けて「お取り寄せ」受付を開始。

それを知った常連さんだけではなく、「いつか京都を訪れたら出町座へ行きたかった」という未来のお客さんまでが商品を購入したのです。

自慢のスパイスカレーはレトルトパックで「お取り寄せ」できる。
人気は自家製「いちじくの蜂蜜漬け」の瓶詰め。
映画鑑賞のお供として人気の手作りスナックやスイーツ、築地さんがブレンドしたハーブティーなどもお取り寄せ可能。

築地「出町座はいま、インターネット配信で映画を上映しています(2020年5月21日時点)。なので『スナック3種セットを食べながら家で映画を観るんだ』といってくださる方が少なくないんです」

築地また、レモンジンジャーの原液を購入してくださったかたがTwitterで『ホットケーキにかけてみた』とつぶやいていて。しかもそれが、めっちゃおいしそうだったんです。


新しい使い方を見つけてもらえて嬉しかったですね。うちの店ではホットケーキは出せないので、お取り寄せをやってよかったなと思いました」

お取り寄せは、おいしいものを届けるのみならず、新たな味の世界を広げるクリエイティブなものへと発展していた様子。さらに築地さんは休映となったシアターを護るかのように、細心の注意を払いながら、店を開け続けました。

築地「カフェが営業をすると、出町座自体のシャッターを閉めずに済むんです。お客さんがテイクアウトでお待ちのあいだにも、次回上映のポスターやフライヤーなどに目を通してもらえる。ここに映画館があることをずっと忘れずにいてもらえる。

それに出町座の扉が開いていると、商店街を通る皆さんが『しんみりしなくて嬉しい』とおっしゃってくださいます。

大きな建物ですから、シャッターが閉まっていると商店街の雰囲気がさらに閑散としてしまうんです。なので、できる限り開けていたい。商店街の皆さんのおかげで私たちも成り立っているのですから」

カフェ「出町座のソコ」は映画館と街をつなぎ、支える役目を担いはじめた。

そう、築地さんがカフェの店長になって感じたのは、映画館とのつながりの重要性のみならず、商店街との結びつきの大切さでした。

築地「商店街にいるから、お店や生産者さんたちが新型コロナウイルスのためにとても困っているのを肌で感じるんです。ライムやバジルなど飲食店がよく使う食材が消費されなくなっちゃって、フードロスがすごいんです。

なのでうちが買い取って、ドレッシングやポン酢にしてみたり、ジェノベーゼソースに加工してみたり。映画館だけではなく、私が好きなこの商店街に、そして出町柳という街に貢献したい。そんな気持ちがあるんです」

映画館と観客と街とをつなぐパイプ役として不可欠な存在となったカフェ「出町座のソコ」。築地さんは、たとえ新型コロナウイルス禍が過ぎ去っても「お取り寄せは続ける」といいます。

非常事態だからこそ見えてきた新たな食文化の物語がクランクインした、そんな気がしました。

  • 出町座のソコ
  • 京都府京都市上京区三芳町133出町桝形商店街 出町座内1F
  • 京阪、叡山電鉄始発駅「出町柳駅」から徒歩約5分
  • 9:00〜21:00(当面10:00〜19:00)
  • image by:吉村智樹
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
  • ※本記事は現段階でのお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの国内情報および各施設などの公式発表をご確認ください。
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京都在住の放送作家兼フリーライター。街歩きと路上観察をライフワークとし、街で撮ったヘンな看板などを集めた関西版VOW三部作(宝島社)を上梓。新刊は『恐怖電視台』(竹書房)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。テレビは『LIFE夢のカタチ』(朝日放送)『京都浪漫』(KB京都/BS11)『おとなの秘密基地』(テレビ愛知)に参加。まぐまぐにて「まぬけもの中毒」というメールマガジンをほぼ日刊で発行している(購読無料)。

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