老舗手ぬぐい屋「永楽屋」の歴史とアートが集結!細辻伊兵衛美術館へ行ってきました

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2022/08/25

江戸から令和にかけて作られた手ぬぐいを一挙公開

1Fのミュージアムスペースには、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和と6つの時代に作られた手ぬぐいが展示されています。それぞれの時代の最高峰の染色技術を施し、製作された芸術性の高い作品が常時30点以上、シーズン毎のテーマに合わせて展示されています。

令和4年の新作「伊兵衛アレンジ」

夏期特別展(〜2022年8月31日)期間中、1F美術館スペース入ってすぐの右手ゾーンでは、「伊兵衛アレンジ」と題した14代細辻伊兵衛氏が平成に発表した手ぬぐいに、今展に向け様々なアレンジを加えた新作が展示されています。

例えば、コロコロ転がるパンダがデザインされた手ぬぐいに、前足と後ろ足の部分に螺鈿泊を施してアレンジした作品や、伝統工芸士による24金箔を施した「金」の林檎など、ぐい〜っと顔を近づけて鑑賞したくなる作品が並んでいます。

昭和の夏、京都の夏を描く「夏の景色」

中央スペースには「夏の景色」をテーマに、「ホタル狩」「ビーチルック」「橋大文字」「舞妓の送り火」など主に昭和初期に発表された作品18点が展示されていました。

昭和初期というと、海水浴がまだレジャーではなく健康を保つためのものだった時代。水着もさほど普及していなかったことから男性はふんどしを着用。

女性の水着はボーダー柄のハイレグではないデザインが主流といった具合に、手ぬぐいのデザインから当時の流行や世相を見ることができるというのも大きな魅力の一つです。

本来、手ぬぐいというと拭いたり、包んだりという実用的なもので、未だにそういったイメージが強いかもしれませんが、こちらの美術館を訪れると、そのイメージは一変します。

クリエイティビティに溢れたアート以外のなにものでもなく、まじまじと鑑賞したい、飾っておきたい芸術作品なのです。

すべての作品が貴重な一点モノ

昭和初期当時、永楽屋では一年間に手ぬぐいを100柄作ろうというプロジェクトがあり、それが十数年続いたことから、その当時のものだけで千何百というデザインの手ぬぐいがあるのだそうです。


とはいえ、戦争や火事、移転などで生き延びた手ぬぐいは多くはなく、今残っているものはすべてが貴重な一点モノ。

また、大正後期は歴史的にも非常に景気が良かったことから、採算度外視で作られていたそうで、「同じ染色方法でこれを作れと言われても絶対にできない。当時と同じ生地も無いですしね。全く同じものは作れません」と伊兵衛さん。それほどのレア物が集結しているということです。

今年3年ぶりに開催された京都の夏の風物詩「祇園祭」

奥のスペースでは、日本三大祭・京都の祇園祭にまつわる、昭和初期の作品「祇園祭“神幸祭”」「船鉾」「稚児」「長刀鉾」の全4点のほか、大正時代発表の「熱帯鐘憬」、明治中期発表の「鞍馬天狗」が展示されていました。

「時代や保管状態により、色褪せているものもあるけど、それが良い味になってると思う」と伊兵衛さん。随所に歴史を感じることができます。

最高峰の染色技術を誇る永楽屋の手ぬぐい

時代を風刺した下絵のデザインもさることながら、永楽屋の手ぬぐいのポイントは「やっぱり染色です!」と伊兵衛さん。いくらデザインが良くても、技術が良くないと意味がない!と、自ら日本全国の染色を見て回り、最高峰の技術を注ぎ込んだ永楽屋の手ぬぐい。

「本当に染色のクオリティが高くて、色落ちもしないので、お客様からのクレームもゼロ」と太鼓判を押します。

永楽屋の手ぬぐいの染色方法、工程の詳細については、こちらをご覧ください。

手ぬぐいの展示方法にもこだわりが

手ぬぐいそのものはもちろんのこと、手ぬぐいを美しく展示するために、ライトや表具、表装にもこだわりが詰まっています。

照らす範囲を点ではなく、手ぬぐいのサイズに合わせて長細く照らすことができる希少なライトを日本全国からかき集め、サイズに合わせた特殊な額をオーダーし、糊で貼り付けて、手ぬぐいにたるみや歪みが出ないようにしているのだとか。

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